第19話 気持ちを持続していく一つの方法
翌日、朝の話で100マス九九の枚数を先生から聞かれた。
先生は、「まず、昨日決めたライバルの記録も注意していて。」と言った。
続いて、「1枚の人?」2人。
「2枚の人?」俺と石橋君の2人。
「3枚の人?」7人。
ここに本間君が手を挙げた。
俺より1枚多くやってきた。
タイムでは負けないと思うけど、練習枚数では本間君の方が多かった。
本間君の方を向くと、ニヤッとしたように見えた。
「4枚の人。」8人
「5枚以上?」9人
「それじゃあ、10枚以上の人もいる?」と聞くと、桐山さんと三神君と山崎君の3人だった。
「何枚?」と聞くと、それぞれ「15枚。」「20枚」「10枚」と応えた。
それを聞き、先生は、「まず、全員頑張ってきたことに、拍手!」と言って手を叩いた。
みんなも手を叩いた。
その様子を見ながら「学校ではやろうと思っているんだけど、家に帰るとやる気がなくなっちゃう人もいるんじゃないかな?」と言って、みんなを見回した。
俺のことじゃんと思った。
「たくさんできた人は、そこをどうクリヤーしているのか、聞いてみよう。
いつやったの?
なぜ、そんなにやれたの?」と先生が聞いた。
桐山さんは、「いつも宿題は学校から帰ったらやることになっている。
最初にいつもの宿題をやって、夕食までの時間、100マス九九をやった。
早く賞状をもらおうと、30分でどれくらいできるか、挑戦したら15枚できた。
これなら、あと1時間10分で50枚に行く。」と言った。
三神君は、「塾の休み時間にやった。時間がもったいないから。」と言い、
山崎君は、「夕食後に10枚挑戦しようと決めていた。20分かかった。」と言った。
それらを聞きながら、先生は、「三人に共通していることは、学校にいる間に、どの時間でやろうか、決めていたと思う。」と言い、「どう?」と三人を見回した。
三人とも頷いている。
それを見て、「やろうと思うだけじゃなくて、どの時間で何枚やるかまで決めておくと実行力が増すみたいだよ。
やる気はあっても、帰り道とかテレビとかの誘惑があると、そっちを先にやっちゃう。
そして、100マス九九をやる時間が無くなったという子もいるんじゃないかな?」
と言いながら皆を見回し、「どう?」と聞いてきた。
俺は、昨日ウイ・イレの話をしたら、やりたくなった。
100マス九九をやる時間を決めておけば、俺も沢山やれたかなあ、と考えた。
「何人か、思い当たる人もいるでしょ。
1枚何分でできるか。
10分あれば何枚できるか。
今の自分の実力を知っておくと、見通しを立てやすいね。
今日のテレビや塾などの時間を考えて、宿題をやる60分をどこにとるか、考えてごらん。
その時、100マス九九をやる時間と枚数も考えるんだよ。
そうやって、自分の目標に向かって努力できる自分づくりをするんです。」と言った。
今日の放課後はサッカーの練習があるし、家に帰ると面白いテレビもある。
時間がないなあと思った。
すると、先生が「60分、まとめて取らなくても分けてとってもいいね。」と言い、
加えて、「早歩きで帰るとか、ゲームをやらない日にするとか、中には早起きしてやるという子もいるかもしれないね。
それもいいよ。
大事なことは、見通しを立てて実行すること。
それは、子どもから少年や大人に近づくことでもあると思うよ。」とも言った。
俺は、毎週見るテレビ番組は意識していても、いつ宿題をやるかは、意識していなかった。
だって、宿題は後でもやれる。
テレビ番組は、見ていないと話しの中に入れないけど、宿題は関係ない。
仲間に入れるか入れないかは、テレビ番組を見たかどうかが大事になる。
宿題をやってきたかなんて、子どもの仲間に入るのには関係ない。
だから、子どもにとって宿題をいつやるかなんて気にしなかった。
でも、先生は、時間を意識しろといった。
それは、子どもから少年や大人に近づくことだとも言った。
子どもから少年になったら、もっと違う何かが出来るようになるのかな?
そんなことを思っていると、先生が、「何時ころやるか、聞くよ。手を挙げて。」と言い、
「4時」から1時間ごと順番に聞いていった。
俺は、8時に手を挙げた。
ライバルの本間君も同じだった。
先生は、「予定を書く時に、宿題を始める予定時刻を書きなさい。
早目に始めてもいいです。
予定時刻に宿題が始まっていたら、赤で1ポイントです。
加算していきます。
一学期が終わるまでにあと65日あります。
50ポイント以上取れるでしょうか。
今日からやります。」と言った。
この先生、言い出すとやることが速いなあ。
ただ、なぜ点数制にするのかなあと思った。
赤丸を付けるだけでもいいんじゃないかなあとも思った。
みんなの様子を見ていた先生は、「最後に、月に一回、今頑張っていた?と電話をかけます。
もうやったとか、今からなどと応えてください。
今日は、あなたかもしれません。」と言った。
宿題のことで家に電話をしてくる先生なんて、初めてだと思った。
そして、うちはいつかなあとちょっと楽しみになった。
さようならをして学校を出た。
サッカーの練習中も思い出し気になった。
サッカーの練習が終わると、急いで家に帰った。
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