第17話 ここからが勝負!
翌日の朝の話で松下先生が、「昨日、100マス九九を頑張った人は、どれくらいいる?」と聞いた。
半分以上の人が手を挙げた
俺もその一人だ。
それらを見ながら先生は、「ここからが勝負です。この前言った自分褒めを実際にやりながら、100マス九九をやり続け、時間を短くしたり、50枚で賞状をもらったりという結果を味わいましょう。
もう一度、頑張った人、手を挙げて。」と言い、手が挙がると、「その人たち、自分に拍手!」と言って、真っ先に先生が大きな拍手をした。
「そう、思いっきり拍手をすることで、嫌な気持ちが吹っ切れ次の力が湧いてくるよ。」と言いながら、手を挙げていなかった子の方を見て「やればよかったと思ったでしょ。その思いを強くして、次は自分がやるぞって気持ちになるように、もう一回拍手するから、やってない人はおめでとう、次は自分が拍手をもらうぞ!って気持ちで拍手しよう。」と言った。
俺も拍手するの?という顔をしている友達に、「そう、あなたも拍手する。
全員で頑張ってきた子を拍手でほめる。
次は自分も頑張るぞという力をみんなで持つために大きな拍手をしましょう。」と言って拍手を始めた。
より大きな拍手が沸き上がった。
その音を聞きながら、先生は笑顔で「苦しくなった時、耳に残るみんなで出した拍手の音と手の感触を思い出し、私ならできる、みんなも応援してくれていると自分に言い聞かせ、乗り切ってほしい。」と言った。
俺は、昨日の嫌になった気持ちが思い出された。
でも、今耳に残る拍手の音を心の中で拍手を行って再現し、その気持ちを打ち払った。
今日も頑張ってみようと思った。
帰りの会、金曜日ではないけれど特別に「100マス九九タイムチャレンジ」が行われた。
先生が言うには、「自分だけだと、人はもういいやとなってしまう。
でもライバルがいると違う。
あの子に負けたくないともう少し努力する。
そう、ライバルは自分が諦めそうな時、頑張れる力を引き出してくれる存在。
タイムチャレンジが終わったら、同じくらいのタイムや枚数の人をライバルに決める。
みんなの前で教えてもらうよ。
それは、相手もライバル視されているのを知る。
お互い素晴らしい刺激になる。
それでは、用意、始め。」とタイムチャレンジが始まった。
終わったので「はい。」と手を挙げると、先生が「3分15秒」と言った。
俺の後にも何人か続いて全員終わった。
先生が、「1分台の人? 2分から2分30秒の人 2分31秒から2分59秒の人 3分から3分30秒の人 3分31秒から3分59秒の人 4分以上の人 と聞いていきます。
自分のかかった時間の所で手を挙げて、ライバルを決めたら名前とお願いしますを言います。
名前を言われたら、言った人の方を見て了解と絶対負けないわよのエアータッチをしましょう。
これからもタイムチャレンジのあと、ライバルを変更する時は、今までのライバルにありがとを伝え、これからのライバルにお願いしますを言ってエアーハイタッチをします。
いい?」と言ってみんなを見回した。
やったことないから、俺もみんなも、わかったようなわかんないような顔をしていたと思う。
「みんな頑張れば必ず、2分前後になれます。より良い自分に向かって挑戦しよう。」と言い、タイムを聞いていった。
もう1分台も4人いた。
2分前半は、5人。
2分後半は7人。
3分前半は8人。
3分台後半は4人。
4分以上は2人だった。
俺より前に16人以上いる。
俺は半部により下なんだと思い、ちょっと悔しいと思った。
先生から、「ライバルは?」と聞かれ、俺が「本間君、お願いします。」と言うと、本間君も、「修平君、お願いします。」と返してきた。
お互いにっこりして、エアータッチをした。
笑顔をつくりながらも、本間君には本当に負けられないと思った。
そして、俺も1分台になれるかなあ、成れたらすごいなあと、淡い夢を持った。
それを感じたのか、先生が「自分の力を伸ばすのも、ライバルに勝つのも、真剣にやった人です。
本気で頑張りましょう。
あと、トレーニングには、全習法と分習法があるんだよ。
1の段から10の段まで全部やるのは全習法、苦手な段を何回もやるのは分習法と考えられる。
今日は、各段に何秒かかっているか調べ、右の空白に書いてみると言い。
どの段が苦手か、タイムからもわかるよ。
苦手な段が分かったら、その段を何回か続けて練習すればいい。
必ずタイムが速くなっているよ。
あと、各段で測った時はそんなに悪くないのに、一度にやると時間がかかるのは、運動と同じで、続けて行う体力がないということだよ。
これは、毎日何枚か続けて挑戦していけば、必ず思考の体力はついてくる。
頑張ろう。
心配なことや困っていることなどあれば、給食時間や昼休みなど、どんどん危機に来てね。」と付け加えた。
俺は、苦手な段が遅いのかな?それとも思考体力が続かないのかな?自分のことなのに、何もわからなかった。
にっこりわらった先生とさようならの挨拶をして学校を後にした。
帰り道、ウイニング・イレブンの話で盛り上がり、お互いの得意技を教え合った。話しながらウイ・イレをやりたくなった。
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