第14話 褒めたり、期待を話したりすることで、やる気を高める松下先生
次の日、午前中全部松下先生の授業だった。だから、先生は俺たちのノートを見る時間がなく、給食時間に班での会食をやめ、食べながらノートを見ていた。ノートを見ながら、にっこりしたり、驚いたり、時々俺が先生の方を見ると、また違う顔をしていた。俺たちのノートが面白いのかなあ?なんか、不思議な気がした。
帰りの会の前、宿題や授業の感想を書いたノートが配られた。みんな先生のコメントを読もうと、もらうとすぐにページを開いている。それを見て先生が、「今日は時間がなかったから、全部のノートにコメントを書くことはできなかった。どれか一冊には書いてあると思う。もしなかったら、さようならの挨拶をしたらノートを持ってきてくれ。謝る。そしてそこで書かせてもらう。」と言った。桐山さん達女子が「今日は忙しかったから、コメントなくてもいいのに。」「そうだよ。」等と口々に言うと、先生は、「ありがとう。私の時間のことも考えてくれて、みんなは優しいなあ。でも、今は、学級がスタートしたとき。それは、自転車で言うと漕ぎ始めた時と同じなんだ。一番推進力が必要な時。倒れやり止まったりしないためには、ペダルをこぐ力を強くすること。みんなの宿題で言ったら、やる気を強くすること。そのためには、今の私にできることは、コメントを書くことだから。」と応えた。それを聞き、天野さんが「書くのは大変だから、帰りの会に口で言ったら?」とアイディアを出した。先生は、「それもいいねえ。これから使わせてもらおうかな。みんなもいいかな?」と聞いてきた。みんなは「いいよ。」と言っていた。石橋君は、「今日、俺っち班で会食だと思っていたら、違った。そんなことない方がいい。だから、口で言えばいいよ。」と言った。それらを聞きながら、「ありがとう」と言う先生の目は少し潤んでいるように見えた。
俺のコメントには、「質問はメモした。私の考えを作ってくるからね!」と書かれていた。どんな考えを示してくれるのかなあと思った。
帰りの会の話は、宿題をやれなかった子の気持ちや事情も分かると言いながらも、「人はやった分だけしか成長できない。どうする?」とその人たちに問いかけていた。何人かは、「今日はやる。」と応えていた。それを聞き、「自分から何とかしようと動き出すのはいいねえ。期待しています。」と宿題を忘れた子への応援と先生の期待で終わった。叱ったり、皮肉ったりする言葉はなかった。先生は、なぜ、叱らないんだろうと思った。
続けて、やってきた子達を褒めた。「時間が短くなってきているね。慣れるともっと短くなるからね。」「時間は同じでも、字をきれいに書こうと意識しているのが分かる。意識する子は伸びる。」といった誉め言葉だ。最後に、「みんな、大変だなあとか、苦しいなあと言う時は、山登りの頂上が近い時。努力は、山登りと一緒で、頂上付近が一番大変。頂上を越えたら、あとは下るだけ。絶対、簡単やラクチンがやってくる。そして、やり遂げた自信と力が後押ししてくれる。だから、今日も頑張ろう!」と終わった。
俺は、まだ大変じゃあないから、頂上付近じゃあないのかなあ、もっと大変な場所もあるのかなあ、その時、俺もできるかなあと不安も感じた。でも、困ったら松下先生に相談すればいいのかなと思い、とにかくやって行こうと思えた。
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