第12話 褒めて、次の段階を勧める松下先生

 朝の会で、「昨日、宿題頑張れた?タイム計れた?」と先生が聞き、みんなから「やった。」「思ったより時間かかった。」「自主勉が思いつかなかった。」等といった反応が返っていった。それを聞きながら、「とにかく、時間を測ってやったことは伝わってきた。みんな頑張ったね。」と言い、「自分の名前を読んで褒めてあげよう。私がやってみるよ。」と言い、「久美子、頑張ったね。偉い!」と言いながら自分の手で自分の頭を撫でた。みんなはそれを見ながら、にっこりした。それを見て先生が、「ほら、今度はみんなの番だよ。」と言った。みんな照れながら自分の名前を言って頭を撫でた。小さい子みたいだけど、最近こんな褒められ方はしていないので、何か心がほっこりしたような気持になった。これが昨日、綾姉が言っていた松下流自分褒めかと思った。

 にやにやしていると、「本読み何分くらいかかった?5分くらいの人?」と先生が+聞いてきた。俺はそうだなあと思い、手を挙げた。ほとんどの子が手を挙げた。「10分?」と聞かれ、手を挙げた子は少ない。「15分?」と聞かれて、手を挙げる子はいなかった。逆に、「もっと短い。3分はないの?」と聞いている子もいた。先生は、その質問には答えず、「だいたい5分くらいでできているんだね。自分が必要とする時間を知ってほしかった。そうすれば、本読みだけでも夕食の前にやろうとか、時間を有効に使うことができるでしょ。3分の人は、3分あれば本読みができるでしょ。」と言った。俺は、そんなにうまくいくのかなあと思ったが、何も言えなかった。

 給食の時、先生は一班から順番に会食している。今日はとなりの三班だ。会食の時は、面白いことも言うが、先生の質問攻撃が定番だ。今日は、「どんな風に漢字はやったの?」とか「計算ドリルを速くやるコツってあるの?」とか「自分勉強は何にした?」と言ったことを質問していた。先生が来ると、愉しい話もあるけど、この質問攻撃はちょっと困るときもあるなあと思った。

 帰りの会で、「昨日の宿題、みんな頑張ったね。」と朝の会に続いて褒められた。そして、ある子の例を話してくれた。「漢字の勉強の時、それぞれのかかる時間を計った子がいます。具体的に言うと、漢字の読みを書くのに3分、漢字を書くのに6分、○付けと直しをするのに10分、合計19分とメモしてきた子がいます。漢字をやるのに、約20分だけでなく、それぞれにかかる時間もわかると、どこを自分が頑張ればいいかがもっとよくわかる。例に出した子は、直しが少なくなるように、覚えるように練習する。そして、「へん」と「つくり」を意識したり、「止め」「はね」「はらい」等を丁寧に書いたり、沢山書いたり、自分に合った方法を探していくようになる。自分を知ることで、より良い自分になろうとする方向が分かったり、力が湧いてきたりする。みんなも時間を計ることで自分を見つめ、どんな自分になりたいか考えたんじゃないかな。なりたい自分に向かっていこう。なりたい自分になるには、自分の行動しかありません。今までより一歩上を行こう。頑張ってやり抜こう。具体的な方法について質問があれば、個々に応えるから聞いてください。宿題のノートは出してもらっているね。そのノートに困っていることとかやってみようと思っていることとかを書いてくれれば、私の考えた解決策をノートに貼って返したいと思っています。より良い自分、なりたい自分になりましょう。」と言い、話を終え、さようならをした。どんどん次が出てくる感じだ。綾姉は、何て言うかなあ。

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