第11話 綾姉に勧められ、レコーディング宿題に挑戦

 綾姉がいいという事ならやってみようと思い、台所からピピタイマーを借りてきた。お母さんが、「持って行っちゃだめ。」と言ったけど、「宿題で使うんだから!」の一言で「後から返してよ。」という優しい言葉になった。「これから毎日使うんだ。先生が言ったんだもん。」と言うと、「それじゃあ、しょうがないねえ。新しいのを百円ショップで買ってこようかねえ。」と返ってきた。だから「それじゃあ、黒にして。買ってきたらこれを返すよ。俺がそっちを使うから。」と言うと、「それじゃあ、修平が買ってきて。明日お金をやるから。」となり、「わかった。」と俺が買いに行くことになった。明日からは、新しピピタイマー。今日は、この古いので頑張ろうと始めた。

 最初は、本読みだ。約3ページ分を音読する。用意、はじめと心の中で言い、ピピタイマーのスイッチを押した。読み終わってストップすると、4分12秒だった。俺って、5分かからないで本読み終わっていたんだと思った。本読みカードに4分12秒とかかった時間を書いた。

 次に、漢字だ。漢字の書きは、最初に読み仮名を書く。次に漢字を書く。そして○付けと直し3回だ。ピピタイマーのスイッチを押した。18分10秒かかった。

 最後に計算ドリルだ。問題を解いて、○付けをする。間違えなおしも漢字と同じ3回だった。目標タイムは12分だけど、14分38秒かかった。計算が少し苦手なのかもしれないと思った。

 本読み4分12秒、漢字18分10秒、計算ドリル14分38秒。合計45分と予定帳に書いた。あと15分、何にしようと思って周りを見ると、綾姉がまっすぐ英和辞典を見ながら英単語を調べることに集中している。俺にも辞書があるかなと本棚を見ると、漢和辞典があった。そうだ、あの時、先生が、「木へんの字を覚えてもいいね。」と言い、稲森さんが「まだ習っていない字があるけど…」と言うと、「例えば、自分の名前に習っていない漢字があったら、習うまで覚えない?そんなことないよね。だから、木へんに春で椿(つばき)。木へんに夏で榎(えのき)。木へんに秋で楸(ひさぎ)。木へんに冬で柊(ひいらぎ)。これって覚えたら面白くない?興味が湧いたことは、その人の知識技能になる。どんどん学べばいい。例えば、6年で習う漢字は、6年生では必ず勉強しましょうねと言うもの。6年までやってはいけませんと言うものではありません。だから、漢字検定試験をやっている子はいろいろな漢字を知っているでしょ。目標をもっていると、人は上に行けるんです。」と言っていた。ちなみに、サンズイがつく字は多いと言っていたなあ。サンズイのつく字を調べて書いてみよう。ピピタイマーを15分にセットして、スタートした。

 湖、海、河、涙、泣く、波、濃霧、…。7点でもうわかんない。漢和辞典を見てみよう。いくつ書けなかったんだろう。漁業、法律、満潮、浴室、水泳、漢字、決定、酒、消す、深い、浅い、油、生活、汽車。13も書けなかった。半分以下だ。3回ずつ練習しながら案外難しいなあと思った。これだけで18分かかった。

 俺の宿題をやった合計タイムは、63分だった。何か凄く疲れた気がする。みんなやってくるのかなあ?と思ってぼ~としていると、綾姉が「頑張ったね。」と声をかけてくれた。そして、「こういう時は、自分で自分を褒めるんだよ。頑張ったねって。それが松下流、自分褒めだよ。」と言ってにっこり笑った。俺も「頑張ったね、俺。」と言ってにっこり笑った。何か、疲れより、爽快な気分が強くなったように思えた。綾姉の言うように、レコーディング宿題に挑戦してよかったと思えた。

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