第10話 綾姉の「松下先生、進化している!!」

 宿題について松下先生が言ったことを綾姉に話した。すると、綾姉は、「私たちの時は、本読み、漢字、計算の三点セットを頑張ろうだった。時間を測るのと、自分勉強。やることが増えている。でも、松下先生が言っている、「自分で時間を生み出す。」は、中学校になると、本当に感じることだよ。部活で遅くなるのに、教科担任で先生たちは自分勝手に宿題を出す。宿題の量が半端ない。だから、手際よくやることと、生活を工夫して時間を生み出すことが、嫌でも要求される。私は、中学一年の中間テストの頃、それに気づいて生活リズムを考えるようになった。松下先生は、小学校の時からそれをやらせようとしていると思うなあ。」と言った。俺は、「綾姉でも、中学校では時間を生み出すのって大変?」と聞いてみた。綾姉は、「やることがいっぱいあるから。のんびりしていられない。ずっと駆け足みたい。」と言い「今から時間の使い方を考えておけたら素晴らしいと思うよ。」と付け加えた。

 口をとがらせながらも頷いた俺は、「時間を測ったり、Aを意識したりすることって、大事?」と聞いてみた。綾姉は、「体重が重い人が、毎日記録をとると、体重を意識して食べるのを減らしたり、運動したりするようになる。それがレコーディング・ダイエットの一番の狙いなんだって。宿題の時間やAも同じじゃないかな。記録を続けることで、自分がどれくらいの力なんだということが分かる。レコーディング・勉強法だね。修平は、自分が思ったより悪い記録ならどうする?」と聞いてきた。俺は、「そりゃ、嫌だから、少し練習するかな。」と口をとがらせて応えた。綾姉は、「そうだよね。練習するよね。私も同じ。」と言い、少し間をとってから「同じ基準だから、友達がどれくらいの力かがわかるよ。修平、ライバルに負けていたら、どうする?」と聞いてきた。あれ?この話し方、松下先生に似てる。綾姉、本当に松下先生が好きなんだなあと思っていたら、本間君の顔が浮かんできた。「修平、おれの勝ちだぜ。」と言いながらニヤリと笑う本間君。「嫌だ。勝ちたい。」と思わず口に出ていた。綾姉が「どうすれば勝てるの?」と聞くから、「練習するしかない。」と応えた。綾姉は、「そうやって、練習させることも考えているんじゃないかなあ。松下先生、私たちの時以上に子どもの心をその気にさせる方法を考えているなあ。私、もう一回、松下先生に受け持ってもらいたいなあ。」と言った。

 そうか、松下先生は、俺たちの中学校生活を見据え、やる気を伸ばしてくれているのか、でも、なんか面倒だなあと思った。

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