第7話 お母さん、修平が自分から勉強している!

 家に帰り、さっそく線対称な鬼づくりに取り掛かった。先生の作った猫の耳を角にして、細いひげを太くしていけば、鬼のひげになる。線対称な鬼の顔を作ろうと思った。最初に赤い線を引き、先生がやったようにうっすら鉛筆で線を書く。角とひげは尖っているから線引きで引こう。目と口も三角にした方が怖そうだ。これは穴をあけておこう。これを赤い線でひっくり返し、なぞる。修平作「鬼」の完成だ。

次は、何にしようと勉強部屋の周りを見ていると、返ってきた綾姉と目が合った。綾姉は目をまん丸くして、「修平、何してる?いたずら?」と聞いてきた。俺は、「違うよ。宿題だよ。線対称な図形を3つ書いていくんだ。」と応えた。「お母さんに言われたの?」と聞くので、「お母さんは何も言っていないよ。」と応えると、「修平が自分から宿題してる!いつも、私かお母さんに言われないとやらないのに!!」とさらに目をまん丸くして叫んだ。お母さんが台所からとんできて、「何があったの?」と聞いてきた。綾姉が、「お母さん、修平が自分から宿題してる。」と言うと、にっこりわっらった。そして、「さすが松下先生だねえ。綾子も松下先生に受け持たれてから自分でやるのが当たり前になったものね。修平もそうなるんだよ。嬉しいねえ。「修平!期待しているよ。」と言いながら台所へ帰っていった。「おう。」と応えながら、綾姉も松下先生の時から自分でやるようになったんだと思った。

 俺は「綾姉、どうして自分から宿題をやるようになったの?」と聞いた。綾姉は、「松下先生の宿題は、やりたくなるような面白いものが多かった。それと、自分はできないなあと思っていると、それがわかるのか、帰りの会の時、少しヒントをくれるんだ。そのヒントをしっかり考えると、自分でもできそうな気持ちになった。それから、松下先生は、正解じゃなくても頑張ってやってきた子は、必ず褒めてくれた。AとかAAをノートに書いてくれた。その子の頑張っているところにコメントを書いてくれ、挑戦することが成長する第一歩だといつも言っていた。先生の言葉を聞いて、挑戦する子が増え、みんな伸びていった。だから、私も挑戦してみようと思ってやってみた。そうしたら、挑戦することを褒められ、やっているうちにできるようになっていった。そして、できるようになろうと自分から宿題をやるようになった。」と教えてくれた。「そうか。だから、この前、松下先生の言うことを信じて、やってみるんだよ。と言ったんだね。」と言うと、「そうだよ。やったもん勝ちだよ。修平、伸びていきな。」と言ってくれた。にっこり頷いて俺は再び机に向かった。そして、線対称な車と線対称な剣を書いた。

書き上げると、うれしい気持ちが沸き上がり、思わずにっこりした。綾姉はそれに気づき、「そういう時は、偉いぞ!自分!!って褒めてやるといいよ。松下先生に教わったことだけど。」と言った。「偉いぞ!自分!!か。」何か誇らしく、少し成長したように自分でも感じた。綾姉が言っていたのは、こういう事かと思った。同時に、今までなかなか頑張れなかった俺は、やろうという気持ちはあるけど、今日のようにやれるかなあと不安にもなった。


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