その6 いざ決戦!

周囲が慌ただしくなる。緊張がはしる。

馨と馨子は日常的に身体の異変を感じるようになる。

時には激痛走り、時には別方向に突っ張り、時に強張り。

激務もあって、倒れる。

無限、馨と特に、馨子を失うことに恐怖覚える。

馨子を永遠子とは違う人格として思いを寄せていることに気づく。

暖かい温もりの中馨子目覚め無限の思いを肌で感じる。

馨子、永遠子も、誰のせいでもなく、これが宿命と受け入れる。

そのせいか、無限の心の声が良く聞こえるようになる。

痛みの間隔が数日から毎日に。

自我の成長に比例するよう身体の違和感に襲われる。

★書生と再会:

馨と馨子、或る日、激痛の余りついに失神。

お嬢、驚き駆け付ける。若も心配。

偶然屋敷に居合わせた書生、騒ぎ聞きつけ行ってみる。

「あ、嬢ちゃま、坊ちゃま!!」

書生は隊士たちに薬を届ける為屋敷を出入り。

常に、馨と馨子を探し回るも情報得られず。

「まさか、こんなところろにいらしてたんですか。」

枕元に居る無限が目に入り、書生、ぎろっと睨む。

書生、ほんの少量の注射打つ。

「成長を止める注射です。少しは楽になるでしょう。」

たなこが作った注射だと言う。

たなこ、二人の命を救った女医と思われる。

二人を見つけたら手術をする手筈になっていたものを、

不慮の事故で死去。書生、慚愧ざんぎに耐えず。

退出時、書生、またも無限睨みつけ部屋を出る。

「どうしてわたしを睨むのだろう?」無限ぽつりと言う。

お嬢、苦痛に苦しむ姿見るの耐えがたいと訴え、

その注射引渡願うも劇薬の為渡せないと書生拒否。

「このまま二人はどうなるのです?

 苦しんだ時、どうしたらいいのです?」

「・・・・・。」書生、苦悩し無言。

二人に、あまり時間がないことを感じる。

★御守様大暴:

若御前、激痛襲い悶絶す。

御守様祭壇から転げ落ち逆毛たて殺気だった顔つき。

いよいよ、時満ちる。

お嬢、髪整え衣装新調。祈り上げる。

時来たり。若決心。激痛止む。

殺人鬼討伐の指令放つ。

隊士各々伏魔殿目指す。

★いざ出陣:

伏魔殿入り口赤魂がやっと通れるほどの針ほどの孔。

日中、監視役の手下有り。

不用意に近づき穴を開くと修復される恐れあり。

日中奇襲計画出るも、伏魔殿暗く殺人鬼ども自在なり。

皆身体清め、馨、黄昏時、俄かに入り口広げる。

と、ともに集いし隊士ら伏魔殿打ち入る。

無限、邪鬼封じの桃の枝でできたる破魔弓持ち無限丸乗込む。

赤魂、浮遊し無限に伴う。

馨と馨子、身体に痛み有り。不安な気持ちを隠し無限を送り出す。

★死闘:

殺人鬼凄腕手下との激闘の末無限丸酷似の美少年剣士殉職す。

あの世とこの世に架かる橋。今正に渡らんとす。

その時、無限、「逝くのはまだ早い。」と美少年剣士呼び止める。

美少年剣士、誰かあると足止める。

「無限。もう一人のお前だ。」と答え無限美少年剣士の魂掴む。

「そう思って、力を貸してくれぬか。」と頼む。

無限と美少年剣士半ば強引に戦場に戻る。

美少年剣士の死惜しむも束の間、次々と倒れ行く隊士達。

中に、勇猛果敢に立ち向かう少年隊士有り。

隊士達に囲まれ殺人鬼討たれたかと思いきや、

少年隊士の身体乗っ取り、更に悪戦苦闘する隊士達。

無限、その中に水縹の剣士見つける。

日輪の光射し勝利の兆し有りと思いきや、少年隊士復活。

鋭い剣裁も、軽やかな身のこなしも悩ましく、

刃先折れ、あわや水縹の剣士!

祈祷所で様子見ている馨子悲鳴。

「助太刀いたす。」無限、水縹の剣士の前に身を投げる。

「あなたに死なれては馨子が悲しむ。

 わたしがあなたの刃になろう。」

★殺人鬼滅亡。

満身創痍仲間たちの封じ手と、自らの内なる葛藤に討ち勝ち、

少年隊士奇跡的に己を取り戻す。

一方殺人鬼の魂、徐々に少年隊士の身体より追払われる。

「急げ、無限!!」「無限急いで!!」

馨と馨子、一刻も猶予ない旨無縁に知らせる。

伏魔殿、崩壊が緩やかに始まる。

無限、美少年剣士の魂連れ、秘密の間へと急ぐ。

隙間より、微かに差し込む日の光。

赤魂も赤い光で辺りを照らす。

頭に入れていた屋敷内の図面であるが、

薄明りの中、甚だ心ももとなし。赤魂さえも道迷う。

なごみ、無限の姿追い、鏡に映し、馨子誘導す。

<左、そう、扉、もうすぐよ。落ち着いて。>

無限、秘密の間の扉に辿り着く。

無限、氣集中し、呼吸整え、殺人鬼の呼吸す。

一つ、二つ、三つ、四つ・・・・

<ぅ痛っ・・・> 

激痛走り思わず馨子小さく呻く。なごみ優しく手当。

無限動揺。赤魂、殺人鬼の呼吸促す。

<大丈夫よ。無限、行って。>

無限、落ち着き、最後、五つ目の扉開く。

美少年剣士、真正面にある少年に驚く。

「あれが、わたしだ。」

そう言って、弓を弾き破魔矢ケースに狙いを定める。

殺人鬼の魂、弓引く無限と無限丸の間に現れる。

随分と萎びて弱った様子。容貌にかなりの衰え。

「無限丸。わたしの無限丸。やっと見つけた。

 さぁ、わたしと共にこの世の覇者になろう。

 お前とだったら、きっと、上手くやれる。

 闇の世界にあってもお前となら輝こうぞ。」

馨たち殺人鬼を祓おうと呪文唱え霧切振りかぶる。

<無限、どいて!>馨子叫ぶと、身体に激痛走る。

無限、どかず、弦引く力弱める。

「お前は賢い子だ。

 さぁ、お前の身体にともに入ろうぞ。」

<無限、どいて、わたし達が斬る。>

哀れ、苦痛で歪む殺人鬼。

「待って、討つな!」

そう言い、無限、弦引くのを止めるも破魔矢は外さず。

「わたしは覚えてる。

 幼き頃、一人、京に連れられ、知る人も無く、

 右も左も分からず、良きも悪しきも分からず、

 そんなわたしを導いてくれた人々を。」

無限は昔の物語をす。

「都のこと、公家の作法、

 珍しい菓子、高価な冊子、世界が広いこと,

 色んなことを教えてくれた。」

殺人鬼の表情が変わる。

「とても美しい人であった。幼心に見とれるほどに。

 まるで京の都そのもの。

 美しもあり、楽しくもあり、趣深く、

 醜くもあり、怪しくもあり、嫌悪するほどに。

 それでも、何故か惹かれる。」

殺人鬼、無限丸との昔を懐古する。

馨と馨子、ひしひしと身体に痛み。耐える。

「そうである。無限丸、なならば・・・

 ならばこそ、わたしと共に・・・

 さぁ・・・・・。」

殺人鬼、皺皺の手を無限丸に差し出す。

弱弱しく震えあるも魔性的な力有り。

無限、ふっと意識飛ぶ。

美少年剣士と赤魂、やばしとあせるも何もできず。

〈無限、しっかりして!〉

馨子痛みに耐え呼びかけ。

馨、痛み押切、霧切一祓いす。

殺人鬼、一瞬怯み、顔を歪める。

馨子全氣集中。再度無限に呼びかける。

しゅるしゅると蔦が伸びて無限の身体に絡みつき、

無限、忍冬の優し甘い香りに包まれ、

永遠子の面影頭を過る。

可能、赤丸、ひより、次々懐かしい人々を思い出す。

「なんと暖かく、馨しい香り。

 そして、懐かしい・・・・・。」

殺人鬼までも気が緩む。

無限、我に返り、弓構える。

「されど許せぬ。お前の悪行。」

殺人鬼、我に返りはっとする。

「長く生きながらえたからと何になる。

 わたしもお前も何百年と生きてきた。

 孤独の中で、乾いた世界を、

 その先に何がある。」

殺人鬼、昔の悔しい思い蘇る。

名門に生まれ、人並み外れた美貌と頭脳。

病さえなければ、そう、病みさしなければ。

慕われる親戚の子。次々と出世する御曹司たち。

病さえなければ、どんな者にも負けやしない。

公卿となって、世をかえられたかも・・・・。

殺人鬼、世を恨み憎悪の氣に身悶え。

無限、破魔矢、殺人鬼に焦点当てる。

「わたしは一緒には生けぬ。

 もう、終わりにしましょう、苦しむのは。」

無限、ぎりぎりと弦引き絞る。

「悔い改め、罪を贖って下さい。」

殺人鬼、気がつくも遅し。

「御免!」破魔矢放つ。

断末魔と共に、無限、殺人鬼の名を呼ぶ。

殺人鬼、射抜かれ、無限丸のケースに激突。

ケースにひび。ガラス飛び散る。

伏魔殿、音を立てて崩壊愈々始まる。

殺人鬼、遠い目で無限丸眺め、

徐々に殺人鬼の呪縛解ける。

「馨、早く封印解いて!!」

無縁叫び、馨、構えること痛み既にピーク。

「馨、わたしが痛みを請け負う。

 早く、封印解いて!」

馨子、自我消し、痛みに耐える。

馨、何とか霧切にて封印解き意識失う。

なごみ介抱。

無限、美少年剣士の魂、無限丸に投げ入れる。

「走れ。」

美少年剣士、無限丸の身体に入り走り出す。

殺人鬼、綺麗な姿に戻り、

瓦礫の中に消えていく。

清々しくも穏やかな顔。

遠く無限たちを見送る。

「わたしの無限丸・・・どうか・・・」

無限と無限丸、崩壊進む中、がむしゃらに走り、

何とか抜け出す。

★伏魔殿崩壊:

日はすっかり高く、日差しが眩しい。

無限、崩れ落ちる伏魔殿を感慨深く眺める。

「さあ、帰ろう。」

無限、やっと一息つき、馨子を呼ぶ。

しかし、反応なし。必死に呼びかけるも反応なし。

無限、胸騒ぎ覚える。

無限丸の身体は年百年ぶりかに動いたことで精いっぱい。

美少年剣士も、慣れぬ身体で体力の限界。へたる。

赤魂までもふらふらと無限の頭に落ちて来る。

無限焦る気持ち有るも、無限丸最早動けず。

無限、無限丸引きずるようにして屋敷に向かう。

空はすっかり茜射す。

★戦いの後で:

馨、眼開ける。朦朧とした意識。

全身に痛み有り。

なごみやお嬢、心配気に見守る。

馨激痛に悶える。なごみ介抱す。

日没、書生、やっと到着。

書生呼びかけ、馨に反応有るも馨子に無し。

最早手の施しようなし。

お嬢注射打つよう促すも顔面蒼白。

馨、意識が徐々に戻る。痛み有。

馨子の意識が遠のくのに気づく。

焦る馨。必死で呼び止める。

馨子、僅かに意識戻す。

〈馨・・・つかれた・・・。〉

〈馨子、駄目だ!目を覚ませ!!〉

〈いいの、わたしは・・・

 生きて、馨。

 もう、わたし、ついていけない。

 だから・・・・馨・・・・。〉

思春期に入り、

馨の目覚しい潜在能力の覚醒もあり、

身体の成長に激しく差異生ず。

〈駄目だ、馨子、逝っちゃだめだ!

 無限が帰ってくるんだ。

 だから、馨子、迎えてあげなきゃ。〉

馨子、ふっととどまる。

〈・・・む・げ・ん・・・・〉

「かおるこ・・・死ぬな・・・」

馨の声に周囲注意はらう。

「坊ちゃま!!」書生呼びかける。

馨、虫の息。書生に縋る。

「馨子が・・・死んじゃう。」

「嬢ちゃま!!」馨子の呼びかけ。

周囲固唾をのみ見守る。

「お願い、薬を・・・馨子が・・」

馨痛みで上手くしゃべれない。

お嬢も薬を打つよう懇願。

書生、困惑。

最早、微量では効果を得られないこと。

自分では調整ができないこと。

全量打てば副作用で死ぬ可能性があること。

若しくは、成長は止まるが、

死なない身体になること。

等々、リスクの方が多い旨説明す。

「せめて、無限が帰ってくるまで・・・」

馨、最早判断力失せ懇願。

「見ていられないわ。

 このままでは馨さんまで死んでしまう。」

お嬢嘆く。

なごみ、祈るように始終馨に手当。

書生、意を決して注射器握る。

「少量なら・・・、

 その場しのぎにしかなりませんけど。

 無限さんが戻るまで、せめて、何とか・・。」

書生馨の腕に注射器当てる。

みな祈る思い。

「かえりたい・・いえに・・」

微かに息を吹き返した馨子呟く。

書生、ふっと、顔に目をやる。

馨子の顔が目に入る。

心に秘めた貴女の面影と重なる。

万感の思い過り手元狂う。

「あっ!」

全量薬打ってしまう。

馨と馨子激しい痛み。

「わたしたちにの家に、

 父さまと母さまの家に・・・」

「はい。帰りましょう。家に・・。」

「駄目!動かしちゃダメ!」

なごみとお嬢は反対するも、

書生馨と馨子を背負い帰る準備す。

「無限さんが来たら家に帰ったと伝えて下さい。」

「駄目よ、行っちゃだめ。

 それに、彼は知らないでしょ。」

「大丈夫、忍冬の絆があるから。

 僕たち、どうせ死ぬなら・・・

 僕たちの家で・・・・。」

お嬢となごみ、泣く泣く別れる。

書生、馨と馨子を背負い屋敷を出る。

何時身に付けたのか、書生、瞬間移動。

僅かな時間で帰宅す。

なごみ、張詰めた気が抜け気絶。

お嬢、お手伝いさん呼び、布団に寝かす。

無限、無限丸背負い漸く帰還。

馨子が居ない旨聞かされ愕然とするも、

無限丸と赤魂残し屋敷飛び出す。

★御守様:

お嬢、御守様に馨と馨子の無事を祈願の為、

御守様の所へ行く。

御守様表情失せる。

手元に寄せるとはらはら髪抜ける。

可能の父の呪い遂に解ける。

若御前、頭軽く気持ち爽やか。

お嬢、御守様の神通力失せるも、尚も、

馨と馨子の為健やかなるを祈願す。

後、

鬘誂え、以後も守人形として大切にす。

心持、馨の面影現す。

★なごみ:

後日、目覚ますも何も覚えておらず。

嘗ての能力も全て失せる。

なごみ、訳も分からず山口に帰る。

赤魂、なごみの懐に潜り込み、

ともに山口に行く。

母全て承知。

赤魂、村の神社に祠を建て納める。

なごみ記憶戻らず。許婚と結婚。

子もでき田舎で穏やかに暮らしたと言う。












 


 

 

 








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