その3 なごみ
★祈祷所完成:
馨は御前様屋敷付神職の見習いする。
新しい屋敷へ移る日占う。
寝殿梁上『七十二星鎮呪符』あげる。
馨「給料あがるのなか?」とぼそっと言う。
無限は、やっと下っ端の隊士並みになるんじゃなのかと、
また、馨より馨子の給料の方がが高いとも言う。
馨愕然。
「だって君、さぼってばかりじゃない。」と笑う。
馨は、可能の父が残した日記や冊子を解いていると言う。
「そんなの冗談さ。」と二人笑う。
世間に漏れることを恐れてか、古文書は全て神代文字で書かれている。
日記の内容は殆どが妻の症状や可能の成長。
可能死後は鬼霊祓いの呪術や事例。
★新居引越 :
某吉日。子の刻(全ての時計を進める。実際は午の刻。)
御前様に挨拶をする。御前様と奥方様は旧屋敷に残る。
新宅儀す。式はかなり簡略化。服装は正装に準ず。
使用人が西門五穀散供、馨西門より入る。続いて黄牛。
女童:御前様娘二人、一人は水桶、一人は松明を持ち、
若君、次いで鏡持ちお嬢、新しい屋敷の門くぐる。最後に無限。
馨、屋敷を反閇の呪術で新しい屋敷のお祓いをする。
御前様娘、厨子所に水注ぎ御殿の四隅に火を灯す。
若君寝殿南側向いて座して五菓嘗。
新御祈祷所には無限勾玉と疫神『御守様人形』安置。
翌朝(時計進めてるため夜。)と第三夜翌朝(夜)。
戸・井・竃・堂・庭・厠の宅神祭祀。
特に竃神念入りに祀る。
三日三晩火絶やさず新宅の儀式終え、娘二人元の屋敷へ帰る。
★猿女巫女 :
猿女巫女だと称する巫女到着するも、馨、偽物だと言い、帰す。
御前様八方手をつくすも送る巫女全て違うと帰される。
天宇受賣命の血を引く正統な者でなくてはならない。
巫女としては居ないかも知れないと、馨、自ら探すと申出。
祈禱所に籠る。
「馨子歌って。女の子の声の方がいい。」
「何を歌えばいい? 今はやりのお座敷小唄?」
「・・・・・・。今まで何勉強してきたの?」
「わたし、神代文字なんて興味ないもん。」
「・・・・・・。」「はいはい、じゃ、アカサタナで。」
馨子は歌い始める。一音一音抑揚をつけて。
その一音は、常人ではとても息つかないほど長く、細く鋭く。
どこまでも透き通る清らかな声。
馨は正統なる猿女巫女の居場所を占う。
慣れていないこともあって、中々方向が定まらない。
定まらない中でも、明らかに西の方角を差す。
馨は馨子の発す言霊を一音一音、遠くへより遠くへと送る。
★なごみ :
山口県某所。山間の里。田舎娘なごみ18歳。
まだ花の時期ではないと言うのに、柔らかな甘い香りがする。
「え? なに?」
女の子の声が聞こえたような気がした。木霊とは明らかに違う。
幼い頃から見えないものが見え、人が死ぬのが何となく分かる。
母もそうであったのであまり気にせず育ったが、
学校に行くようになって、うっかり「あのおじいさん死ぬよ。」
と漏らし、周りの人から気持ち悪がられ心に傷を受ける。
自分は普通の子とは違うことをしり、
以後、超自然的なもは感じないよう封印。
母にそれとなく何か聞こえないか聞くも、母には聞こえず。
婚礼間近で不安定な時期。多分、気のせいと無視。
しかし、その声はだんだんはっきりとして大きくなっていく。
匂いが纏わりつく。頭がぐあんぐあんする。もはや無視できない状態。
それでも、聴かない様にするも、拒否すればするほど具合が悪い。
★その時馨は:
「見つけた!! 馨子行くぞ! 歌を止めるな。」
と、ご祈禱所を飛び出し山に駆け登る。早い早い。
山の頂上、四方結界をたて、遥か彼方、遠く西の方を見やる。
馨が氣を入れると風が東から西しへと吹き、馨子の言霊が流れて行く。
遂に、なごみ、その馨子の声を受け入れる。
とても透き通って、心が洗われるよう。
甘い香りは心地よく、何か憑物が取れていく感じ。
もはや、行かなければならない気がしてくる。
どこへ?分からないけど、その声の処へ行かなくてはと。
「なごみ、お前、どこ行く!!」
母が気づき、なごみを抑える。
なごみは、行かなくてはと、家族の腕を振り払おうとす。
「こら、待たんかぃ!! 祝言はどうするんじゃ!」
父の声も、誰が何を言ってももはや耳には入らない。
「狐憑きじゃ、狐憑きじゃ。」と大騒ぎになり納戸に閉じ込められる。
無限、御前様に様子伝える。御前様早速迎えを手配。
言われた通りの場所を探し行くも半信半疑。取り敢えず連れて帰る。
なごみ到着:丁度、何十回目かの『ん』を歌え上げようとした時、なごみ到着す。
しかしながら、どこからどう見ても野暮ったい田舎娘。
野良仕事で日に焼けて黒く、着物は薄汚れてこ汚く、
髪は無造作に結わえただけ。お世辞にも美しいとは言えない容姿。
巫女などとはほど遠く、神秘的なものは全く感じない。
関係者たち疑うも、馨と馨子はこの娘だと言い張る。
見た事のない御殿に、なごみ緊張でがちがち。
風呂に入れ、着替えさせ、食事させ、身なりを整える。
鬼も十八番茶も出花。馬子にも衣装とはよく言ったもの。
よく見れば、可愛くもなくない感じ。純朴な感じがとてもよい。
今更ながらにとんでもない所に来てしまったと、なごみびびりまくる。
わたしは巫女などではないと訴えるも、馨聞かず。
禊をさせ、ご祈禱所に呼び、馨、なごみの額に手かざす。
「えいっ!」と氣合を入れると、なごみの封印解ける。
ぶあっと、一気に色々な物が見え、なごみ気絶。
以後、100日間禊。世上の汚れを落とす。精神統一。心身整う。
★伏魔殿 :
極悪非道な暴君。かつての高位貴族の子息の館。
選りすぐりの手下を従え、世界制覇の陰謀描く。取り合えす日本から。
太陽を克服する秘薬や裏切り者の捜索で手下忙し。
お頭様はとにかく美しもの好き。女性であろうと男性であろうと。
手下たち、お頭様好みの、特に美少年も探さなきゃなんない。
気に入らないと喰い、気に入ると仲間にし自分の世話をさせる。
飽きたり失態を犯すと消される。御殿勤めは皆ぴりぴり。
強くなれば、活動要因として採用の道有り。
伏魔殿の中枢に、お頭様以外入ってはならぬという部屋有り。
迷路になっており、上手く辿り着いたとしても扉が何重にもある。
全てに鍵がかかっており、お頭様の生態認証のみ開けることができる。
その生態認証とは後ほど。
最終扉の向うには、言わずもがな、無限が。
ケースに入れられ飾られている。もっと綺麗な服着せたいと苛々。
ケースの組み立てはお頭様が自らしたのであろうと思われる。
お頭様、ケースの前でうっとり。乾燥した忍冬を見る。至福の時。
どんな美女も評判の美少年も無限に敵う者なし。
無限の意識を取り戻そうと色々試してみたが全て失敗。
どうやら可能が無限の霊魂を抜き採ったからだ、と分かる。
無限の霊魂は御前様の屋敷の祈祷所にあるらしいと、つきとめる。
御前様の屋敷の在りか探すも見つからない。
手下、探しものほとほと多し。
★お頭様無限丸に執着する訳:
しかし、何故、無限丸にそれほどまでに執着するのか。
無限幼い頃、京に来て間も無く。お頭様青白美青年時代。今も青白。
一族の子が友達の友達に誘われ、ある高位貴族のお敷居に行く。
無限の子守あり。一緒に連れて行く。
そこの高位貴族の若君、身分隔たり無くよく子供を屋敷に招く。
一族の子ら遊びふけ、幼い無限放ったらかし。
無限、庭で一人遊びす。うち、げぼげぼ聞こえ興味持つ。
ふらふら誘われるがまま行くと、青白美青年患い独り床にいる。
気の毒に思いうっかり声をかけてしまう。
無限、忍冬は解毒作用有り、明日持ってきてあげると約束す。
真直ぐで人懐っこい瞳。見るからに可愛らしい童。
思えば今の今まで、多くの子らが遊びに来たとて、
誰一人として声を掛けてくれる者などいなかった。
げぼげぼ辛気臭くいと忌み嫌われ、使用人たちさえ極力近寄らず。
幼い頃は、医師やら陰陽師やら験者やら、始終呼び集め、
それも今じゃ父母さえも匙を投げ、気休めな程度の治療を施され、
ただ独り、職にも就けず寝かされているだけ。
全てが恨みがましく思え、一層、無限の無邪気な瞳が心に沁みた。
次の日、約束通り、一族の子に連れて来て貰うが門番に追払われる。
お屋敷ではよくある事で、若君がいつでもおいでと言うのを真に受け、
本当に来る子が度々有り。門番は、まともに取合わず追払っている。
それでも、忍冬は、青白美青年の下に届けられる。
余り期待せずにいたものを、青白美青年、いたく感銘す。
とは言え、忍冬では青年の病治せず。
どこの子か確かめる手立て無し。呑まずに大切に保管。
幼い無限は、そんなことあったことなどすっかり忘れてしまう。
数年後、無限美少年ぶりが評判となり青年の耳にも入る。
たまの外出時にでも見かけたのだろう。
忍冬をくれたあの可愛らしい童が美少年で評判の無限丸と知る。
天子様の行幸にも無理を強いて出かけたに違いない。
以後、方々手を尽くし、無限を屋敷に招き入れる様画策す。
人との関わり方分からず。親しみを込めれば込めるほど嫌われる。
汚れた者どもが無限に無い事無い事吹聴しているせいと世間を逆恨み。
お頭様の頭の中では、純真無垢なあの時のままで時が止まっており、
無限だけが、邪心無く、自分に心を寄せてくれると信じて止まない。
★無限祈禱所訪問す:
無限、久々に馨子と馨に会う。無限、馨をまじまじと見る。
「やっと、君らしい顔つきになったね。」
馨は自覚が出てきたせいもあってか、風格がでる。
無限、禊し、ご祈禱所に入り結界をたて、馨の祈祷を受ける。
祭壇に無限の魂を移した勾玉と、新しく拵えた人形揃える。
なごみも立ち会う。終わる頃には、なごみ、無限の姿認識す。
無限は、例えて言えば、影のようなものだが、影よりずっと物質的。
実態があるようでないが、ないようでかなり質感有り。
馨の祈祷でより、質感増す。
今まで、せいぜい屋敷周辺と活動範囲に制限有りだが、
馨の力で馨が氣を飛ばせる限り可動範囲無限大。
★御前様訪問:
御前様に馨たちの様子報告す。後日、なごみ連れて来る旨伝える。
御前様、なんだが具合悪そう。
大丈夫かと聞くも、いつものことだと言う。
一方、無限、晴れ晴れとした顔。馨の成長が嬉しい。
御前様、そんな無限の顔を改めて見て言う。
「それにしても、よく似ている。あなたとあの子。
気にも留めなかったが、最近、ちょっとした事が気になってね。
そう、ふっとした仕草とか、特に、笑った顔がそっくりだ。」
あの子?馨子と馨にも以前そんなこと言われたことがある。
無限によく似た隊士に会ったと。
御前様のいつもと違う様子。気になる。何か深刻な様子。
無限、その子に会ってみたくなる。敷地内うろつく。
その子と思われる少年見つける。何か子どもっぽ。
可愛い少年ではあるが、似ているといわれちょっと心外。
少年と無限すれ違う。少年は無限に気づかず。
ちょっとしてから「ん?」といった感じで振り返り、行ってしまう。
★水縹の剣士:
その後、水縹の剣士と無限出会う。
「君、あの時の子だよね。」
相手が水縹の剣士と知り、無限、敵意剥き出しムッとする。
「人形、君たちのお母さんの・・・渡そうと思ってたんだけど、
今、部屋に取りに行ってくるから、待っててくれないか。」
「人形?」無限は人違いだと気づく。
「ああ、馨と馨子のこと?おじさん、自分で渡せば。」
と仏頂面で言う。
水縹の剣士「お・じ・さ・ん・・・・って。」
「おじさんから渡してよ。その方が、馨子、喜ぶよ。」
と無限ぼそっと言って行ってしまう。
「どうしたんですか? また独り言? 面白い人ですね。」
と様子を見ていた仲間にくすくす笑われからかわれる。
「あの子・・・。」
「え? 誰もいませんよ。大丈夫ですか?」
と、またくすくす笑われる。
水縹の剣士、頭混乱。
あの子たちは一体・・・何人?
初めて出った時は男の子だったような、女の子もいたような、
屋敷周辺で見たときは、二人だったような三人だったような・・・、
そして、今は、確かに、一人いたよな・・・・・絶対いたよな。
そういや、あの子・・・・どこっかで・・・・?
★なごみ参加:
なごみは正直、何故、この屋敷に呼ばれたか分からないでいる。
両親も、自分を納戸に閉じ込めておきながら、しかも祝言間近で、
屋敷の人が来たら、何故、あっさりと自分を引き渡してしまったのか。
猿女巫女って何?猿女巫女と聞いた途端、親たちの態度が変わった。
ただ、分かったことは、
『伏魔殿に閉じ込められた少年を助け出す。』と言う事。
それが、何故、自分?
「だって、あなた、僕たちの呼びかけに応えたじゃない。」
「わたしたち、あなたの力が必要なの。」
馨と馨子がなごみに言う。なごみは改めて二人を見る。
身体は一つなのに、何故か男の子と女の子とが居るのを感じる。
馨と馨子は、自分たちの生立ちや、鬼子に見せられた幻影を教える。
やっと、なごみの頭の中を巡る映像とが紐づけられ、整理がつく。
しかし、尚更、何故、自分が?
「僕たち、霊感もなければ超能者でもないからね。
僕たち、見えないものは見えないし、
聞こえないものはきこえないんだ。」
「でも、あなたは違う。あなたは見えるのでしょう、見えないものが。
そして、聞こえるのでしょう、聞こえないものが。」
「・・・・?」
なごみ、正直、子供のくせに偉そうにと気分害す。
だが、特に馨は威圧感有り、言い返せないでいる。
★なごみ夢を見る:
その夜、なごみ、不思議な夢を見る。時は平安。
なごみの母、とある神社で巫女として勤める。
ある事情有りて出奔。追われる身となる。
行く当てもなく洛中逃げ惑う。
寺の慈善で食いつなぐも、坊主に襲われそうになり逃げ出す。
空腹の末、行き倒れ寸前の処、とある武官に拾われる。
暫く厄介になるも行くところなし。武官宅で働く。
母は美人ではないが、何となく神秘的な感じ。
実際、ぼんやりとだが、なにかが見えるらしい。
うち、武官の子妊娠。その武官こそ、無限の義父である。
女子出産。ひよりと名付けられる。
母、ひより感受性強し大いに懸念す。
2年後妹生まれる。妹は少々ぽ~としてる。
ひよりは鈍くさい妹にいつも苛々。
実は、妹、人に見えないものが見え注意力散漫。
ひより、母似のせいか美形の家系の割、お世辞にも綺麗とは言えない。
見目麗しい永遠子に対して劣等感持つ。
本来の性格は、真面目で素直。気立てもよく働き者。
こと永遠子に関するとなると、
祖父母にかしずかれ、華麗な着物を着せられ、いい教育を施され、
お姫様ぜんとした生活を見せつけられ、平常心ではいられない。
祖父母、ひよりを良家に嫁がせようと行儀見習いも兼ね、
永遠子の御付にしようとするも、泣いて拒否。
祖父母の思いよりも、母親の身分のせいで、
ことごとく差がつけられることに耐えられず。
母、悪い氣が憑りついてるとひよりを折檻。
祖父母にはひよりの苦しい心打ち打ち明け詫びる。
妹や他正妻の姉妹や一族の娘たちは祖母の家を出入り。
ひより8歳の頃、無限丸養子となる。
無限丸の端正な顔立ちに加え、性格の良さに心癒される。
以後、無限丸可愛がるうち、徐々に、思いを寄せるようになる。
無限丸と永遠子許嫁になる。
いけないと思いつつも、最早、永遠子を恨まずにはいられない。
母から嫉妬心から生霊となり人を取殺すこともあると聞かされる。
母、ひよりに不安を感じ忠告す。
女童で宮中に上がる話が持ち上がり、救われた気持ちになるも、
無限丸の永遠子に対する熱の入れように心掻き乱れる。
永遠子、右大臣宅に移り、これで気持ちも落ち着くと思いきや、
無限丸の心を痛める様子を見て、心穏やかではいられない。
永遠子に対しての理不尽な憎悪に苦しむも、憎悪は膨らむ一方。
そんな中、無限丸妖怪に攫われる。ひより無事の帰りを神仏に祈る。
永遠子、負傷し、小雪丸号に背負われ館に戻る。
いざ、変わり果てた姿を目のあたりにして、ひより愕然とす。
自分の悍ましい心が生霊となってそうさせたのだと、猛省。
永遠子の為祈るも甲斐なく、永遠子苦しみの果て永眠。無限丸不帰。
その後、ひより出家願い出す。永遠子の菩提を弔う。
また、無限丸の無事の帰りを祈る。
暫く後、ひよりの妹周防の国に嫁ぐ。
送り出す日、母より自分は猿女巫女の血を継ぐ者だと明かされる。
昔、覇権争いにてある一族ら、猿女巫女の血奪い合う。
今(平安の時代)でも猿女巫女血統と知ると婚姻という形で略奪。
母、婚姻強要されるも拒否。逃走。
捜索願出されるも、無限丸の父の計らいで自由の身になる。
なごみ目覚めたあと、後味悪し。
馨たちの話を聞かされたので、妙な夢を見たのだろうと思うも、
夢のことが気になる。
新屋敷の様子を見にきた無限にそれとなく聞く。
年上の義姉はいるかと。
無限、何人か義姉妹有り、名前度忘れするも、
「3つ上の義姉様が、特に親切にしてくれたのを覚えている。
遠い国から来たばかりのわたしを、よく慰めてくれた。
わたしはその義姉を母のように慕ってたものだ。」
と思い出話をする。
何故、自分が、と思っていたが、なごみ、腹をくくる。
★なごみ御前様と面談す :
無限は、御前様の様子から、何となく胸騒ぎする。
なごみとの面談を急ぐ。少しでも安心させてやりたい気がして。
なごみは随分巫女の姿が板についてきた。
早速、段取り。早朝、馨子と馨を伴い屋敷になごみ連れて行く。
馨子と馨は、奥方様や残った御子達に久しぶりに会えて喜ぶ。
奥方様たちに若君とお嬢の近況報告す。
オーラ0の馨であったが、変わりっぷりにご家族様ら驚く。
呼ばれるまで、しばし、使用人たちや御前様家族と歓談。
なごみがちがち。菓子勧められるも喉通らず。
御前様にいよいよ面談。
御前様、気分が良さそうなので一先ず無限ほっとする。
「君たちが来てくれたおかげで今日は気分がいいよ。
あなたが、正統な猿女巫女の末裔?」
なごみは、緊張のあまり低頭したまま。
「そんなに緊張することはないよ。
すまないね、遠い処。礼をいいます。」
御前様はとんと軽くなごみの肩を叩く。なごみの力がふっと抜ける。
この人の為に、人々の為に、力にならなくてはと、
不思議なもので、自然と、そういう気持ちが湧いてきた。
馨子と馨には、
「馨は風格がでてきたね。以前とは見違えるようだ。」
と、慈しむようにまじまじと眺め言う。
「馨子、何時ぞやの時はすまなかったね。お仕置きして。
鬼子は喋れないからね。でも、嫌だという意思はあるようだ。
無理強いなら、君は、今、こうしてはいられなかっただろうしね。
それにしても、随分、豪快に切ったものだね。
鬼子の髪はすぐに伸びたけど、何事もほどほどにしなくては。」
軽く微笑む御前様だが、馨子と馨は、何だか御前様は疲れて見えた。
馨子と馨となごみが下がり、無限だけが残された。
「どうやら、やつにここが知られてしまったようだ。
暗くならなうち向こうの屋敷に帰った方がいい。」
「あなたは?」
「わたしは、ここに残るよ。ここでやつを迎え撃つ。
いよいよ、時がきたようだね。
終わらせたいのだよ、わたしの時代で・・・。
子供たちを頼みます。」
「・・・・・死なないでくださいね。」
御前様は静かに微笑む。
お昼を食べたら出立することにした。
無限たちは、ご祈禱所に行き、御前様に言われたことを告げる。
「あいつ、今晩、この屋敷に来る?」馨子が聞く。
「来るかもね。」無限が答える。
「じゃ、無限の魂の入った勾玉も?」馨が聞く。
「ああ、そうだろうね。」無限が答える。
「あの・・・その勾玉って新しい御祈祷所にあるのでは?」となごみ。
「そうだよ。」馨が答える。
「これは好機かもしれない。」馨にいい考えが浮かぶ。
馨の考えを伝える。
古い御祈祷所には、無限の勾玉だけが無く、あとはそくっりそのまま。
祭壇に、偽の勾玉を置く。その勾玉に天眼を仕込む。
やつは無限の勾玉と思い、天眼入りの勾玉を持っていく。
そして、なごみの神通力で天眼を通して様子を探る。
「わたしは?」と馨子が聞く。
「馨子はまだだ。取り敢えず、伏魔殿の様子を探らなくては。
それからまた作戦をたてよう。」
馨は、勾玉に天眼を埋め込む祈祷をす。
「上手くいくかしら?」
「あとは天に任せよう。」
昼食を食べ、いよいよ出立。
「奥方様たちは新し屋敷に行かないの?」馨子が聞く。
「わたし達はここに残るのよ。あの子たちを宜しくね。
大丈夫よ。さあ、暗くならないうちにお行きなさい。」
まるで今生の別れのよう。とても名残惜しい。
馨たち帰宅。御子達に御前様屋敷の様子や御家族の様子報告。
御子達、終始重い面持ち。
早速、ご祈禱所に入り、天眼の勾玉を確認す。
「なごみさん、見える?」
そういわれても、なごみには何も見えない。
馨は呪文を唱えながら印を結ぶ。
ぼんやりだが、何かが見え始める。
「氣を集中して。そうだ、あの鏡に見たもの移して。」
馨は、また呪文を唱える。すると、だんだん見えてくる。
「あ、見えます。先ほどのご祈禱所が。」
なごみ、言葉をのむ。
「あ、あれは奥方様・・・・祈ってらっしゃる。
・・・・それに、涙をながしていらっしゃいます。」
「うん。」
これから何が起こるのか、誰にも分からないが、
御前様の覚悟は痛いほどは伝わる。
「あとは、夜を待とう。」
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