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本当は気がついていたはず

いつもより 外が騒がしく

いつもより 赤々として

近づいてくる蹄の音を聞いていたのに


なのにどうして寝ていられたのだろう

家を焼かれ 追い立てられ

捕らえられ 手をのばしたけど

お父さんは 倒れて行った


赤々と燃える 炎の中に

それともあれは 血の海だろうか

その時 火の粉が散った

生木がはじけて 炎が上がった


少女たちの小さな悲鳴があがったけれど

少女のそれは 奇声であった

炎に向かって身を乗り出して

精一杯に 手を伸ばして


お父さんを取り戻そうとして

いいや 取り戻そうとしたのはお父さんだ

娘を取り返そうとして

そして お父さんは討たれて倒れて行ったのだ

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