第161話『棺の中から』


かの世界この世界:161


『棺の中から』語り手:ポチ         






 四人とも固まってしまった。




 当たり前だ、吸血鬼がベッドに使っているのでなければ死体が収まっているはずの棺桶から声がしたのだから。


 でも、固まり方が違う。


 あたしはオカルト的な驚き、フェンは犯罪の証拠を見てしまったように驚き、中年夫婦はちょっとした隠匿物資を見つけられたような驚きだ。


『あ……だれか、人がいるのかい?』


 気まずそうに棺の声が続いた。


「棺の中は母なんだ。死亡予定日には間があるんだけど、仕事の都合で、今日しか墓地にいけなくってね……そりゃあ、死亡前埋葬は違法だけども、みんなやってることだし……むろん、母の意思は確認したよ」


「そうなの、そもそも言い出したのはお義母さんの方からなの。そうでしょ、お義母さん?」


 すると、ほとんど音もなく棺の蓋が開いて、顔色の悪いお婆さんが上体を起こした。


「よっ……こらしょっと。そうなの、言い出したのはわたしよ。息子は公務員で、内容は言えないんだけど、とっても忙しい仕事をしているの。それが、来週……グズグズしてたから、もう明日からかしらね、とても忙しくなるの。国や社会にとってもとても大事な仕事でね、この春に課長になったばかりで、繁忙期に休むわけにもいかないし。それで、わたしから言ったのよ。通りすがりのお人なんでしょうけど、これも縁だと思ってちょうだい。この通りだから」


「あ、え、死に装束で手を合わされましてもね」


「じゃ、頭を下げるわ。これ、この通り。ほれ、あんたたちも」


「わ、分かりました。見なかったことにします。見なかったんだから、エンコしてることにも気づかないわけだから、修理は他の人に見てもらってください。じゃ、いこうベス」


「う、うん」


 回れ右した後ろから、小さく「ありがとう」の声がするけど、気持ちは「手を貸してくれたっていいじゃないか」が感じられ、なんだか、わたし達の方が悪いことをしたみたいで、面白くない。


 フェンが車を出すのを待って声をかけた。


「生きたまま葬るってありえあないでしょ」


「死んだら神さまだからね、そんなに抵抗はないんだろう。棺も生前葬仕様で、最長一年の生命維持ユニットが付いている。違法なことなんだけど、半神政府も実質は見て見ぬふりなのさ」


「公務員って言ってたわよね。公務員だったら、有給ぐらいなんとでもなるって気がするんだけど」


「あいつは、情報管理局だ。以前、潜り込んだ庁舎で見かけたことがある。なにか大きな動きがおこる前兆なのかもしれない」


「半神族って、わけわからない」


「ちょっと探りを入れてみよう」


 ニヤリと方頬で笑うフェン。


「フェン、変な笑い方しないでよ」


「フェンじゃない、ダグだよ。ベス」


「そうだったわね」


 車はデミゴッドブルク方面行きの車線に移っていった……。




☆ ステータス


 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・300 マップ:14 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)


 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)


 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)


 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 


 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士


 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 


 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児


 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 


 



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