第160話『国民的大衆車フォルクスオーパー』


かの世界この世界:160


『国民的大衆車フォルクスオーパー』語り手:ポチ   






 二号戦車のゲペックカステンにソウルを入れてやるとセダンに変わった。


「これは二世代前のフォルクスオーパーだ」


「それって?」


「国民的大衆車だったんだけど、垢ぬけないデザインだったんで、社会が豊かになると売れなくなったんだ」


 フェンは、そう言うけど、カクカクしたボディーは四号や二号に通じるものがあって、とっても実直なイメージで好ましい。


「でも、こういうの好きよ」


「ぼくだって好きだよ。地に足が付いた感じは、いまの僕たちにも通じるところがある」


「フフ、そうかもね」


 そう応えると、フェンは目尻をシワクチャにして笑った。


 いまのわたしたちは、乗り慣れた車で定年後の旅に出た初老の夫婦という感じになっている。


「いこうか、ベス」


 運転席に乗り込むフェンは、何十年も言い慣れたように、わたしをベスと呼んだ。


「こうかい?」


「そうそう、五歳は若くなったわ」


「五歳かい、十歳は若いだろ」


「あつかましいわよ、ダグ」


「おれはダグかい?」


「ミスター・ダグラスって呼んで欲しい?」


「よせよ、他人行儀な」


 エンジンが暖まって街道に出たころには、ダグとベスのベテラン夫婦になりおおせていた。


 カーラジオから流れるオールディーズの曲に耳を傾けていると、前方の反対車線にエンコしたワゴンが見えてきた。


 いったん通り過ぎてからUターンしてワゴンの後ろに停車させる。


「あの車、棺を載せてるわ」


「訳ありなのかな……」


 一言呟くと、ダグは車から降りて声をかけた。


「どうかしましたか?」


「ブレーキの調子が悪くて、今度走り出したら停まりそうもないんで途方に暮れてるんです」


「JAFには?」


「電話はしたんですが、立て込んでて、半日はかかるってことで」


「半日なんて待ってられないわよ、やっととった休暇なんだから」


 どうやら、休暇を利用したドライブでエンコした中年夫婦のようだ……でも、ドライブに棺?


「よかったらみてみましょうか、多少は車が分かりますから」


 夫婦は、わたしたちの車を見て納得の表情。二世代前のフォルクスオーパーを乗りこなしているのは車のメンテにも長けていると判断したのだろう。


「ありがとうございます。よかったわ、これで間に合う」


 奥さんがバックシートの棺に話しかけた。


『ああ、頼むよ……おまえたち』




 ギョエ! 


 棺の中から声がした!




☆ ステータス


 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・300 マップ:14 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)


 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)


 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)


 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 


 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士


 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 


 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児


 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 


 



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る