第159話『デミゴッドの墓地・2』
かの世界この世界:159
『デミゴッドの墓地・2』語り手:ポチ
いくつもお墓は見てきた。
人と言うのは川沿いに住むもので、とうぜんお墓も並ぶ。それにムヘン川は最前線になることが多く、石を一個置いただけの兵士や犠牲者のお墓もある。霊魂と言うのは死んでもなかなか肉体から離れられないもので、お墓の傍に寄ると時どき頭が痛くなったりする。あたしはシリンダーだったので、そういう霊的なものには人よりも鋭いみたい。
ところがデミゴッドの墓地というのはアッケラカンとしていて、霊的なものを何も感じない。
「デミゴッドは半神。つまり半分神さまだから、死んだら魂は神界に上って神になるんだ。だから、お墓は抜け殻の肉体だけが葬られている。だから怖くはない」
うん、怖くはないよ、霊ってご近所の皆さんて感じだったし。
「でもね、中には神であるよりも人の属性を大事にしたいデミゴッドもいて、そう言う人の霊は残っているんだよ」
「え、どこに?」
広大な墓地を見渡すと、ところどころで墓守さんたちが掃除をしているのを見かけるだけだ。
「おーい、一号さーん」
彼方の墓守さんにフェンが呼びかけた。この距離じゃ聞こえない……と思ったら、フィルムのコマが落ちたみたいに、唐突に目の前に現れた。
「なんだいフェン、おや、今日は女の子連れてんのかい」
「ちょっと訳ありでね。ちょっと方針転換して、半神たちを覚醒させたいと、この子といっしょにね。この子妖精のポナっていうんだ」
「ポ、ポナです」
ペコンと頭を下げてしまう。
「妖精さんねえ……」
み、見破られたか!?
「みんな、いろいろ事情があるからね……わたしは墓守一号、よろしくね。昇天しなかった半神と言った方がいいかな?」
は、半神さん……ど、どうしよう、握手なんかしちゃったよ!
「ここに来たってことは、やってくれるんだね?」
「うん、及ばずながら。逃げてばかりじゃ解決しないからね」
「うん、それでこそオオカミ族の束ねだ。しっかりおやり」
「それで、ソウルを借りに来たんだ」
「ああ、いいよ。こういうこともあろうかと三人分のソウルを用意してある。正体がバレそうになったら心の中で『チェンジ』と呟けばいい。ぜんぜん別の半神ということになるから」
「ありがとう、恩にきるよ。でも二人分あればいいよ」
「向こうに見える二号戦車で来たんだろ、一つは二号に使えばいい。そうすれば乗り物から足が付くこともない」
「そうか、目につかないように人里では隠しておくつもりだったけど、二号もチェンジできるのならありがたい」
「でも、一つだけ注意しとくよ。けっして三年は超えないこと。三年を超えると……」
「元に戻れない、だろ? 大丈夫、それまでにはスヴァルトアルムヘイムもヨトゥンヘイムも、いや、ユグドラシル全体をまともにしてみせるから」
「大きく出たね。ま、無理をせず、半神のできそこないどもをなんとかしてやっておくれ」
「分かった」
「そっちのお嬢ちゃんも。あんたも流転の星に生まれついてしまったみたいだしね」
「は、はい」
「自分が、なにに属するのか、フェンといっしょにお考え」
「はい」
「じゃ、二人とも目をつぶって口をお開け」
フェンと並んで口を開ける……すると、なにか暖かい空気のようなものが入ってきて、すぐに体全体が暖かくなってきた。
目を開けると、もう墓守さんの姿は無かった。
☆ ステータス
HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・300 マップ:14 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
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