第162話『静かな宿』


かの世界のこの世界:162


『静かな宿』語り手:ポチ           






 あれ…………?


 そう言ったきり、ダグ(フェン)は車を止めてしまった。


「どうかしたの?」


「街の様子が変わってしまってるんだ……大きくなってるし……」


 わたしは初めてだから、大きいもなにも分からないんだけど、ダグの表情から、うかつにデミゴッドブルクには踏み込めないということは分かった。


「さっきの車で、てっきりデミゴッドブルクは縮んでいると思ったんだが……」


「どういうこと?」


「あの婆さんは命のあるうちに葬られようとしていた。半神族は肉体が滅ぶと神になる。だから肉体には未練が無いんだ……だから、肉体の街や世界には未練がないんだと思っていたんだ……それが、このありさまだ。うかつには踏み込めない」


 市街地からは一キロはあるところだけども、建設中の機械や工事車両の音が聞こえてくる。


「今まで通って来たところは、あんまり人気(ひとけ)は無かったでしょ」


「ああ、やつらは、さっさと肉体を捨てて、ヨトゥンヘイムを征服するんだとばかり思ってたからな……どこか郊外で宿をとって考えよう」




 しかし、なかなか宿はとれなかった。どこも、工事関係者が泊っていて空き部屋が無かったのだ。


 四軒目で泊まることができた。


 築三十年ほどの二階建てのホテルだ。豪華でもきれいでもないが、清潔で品のいいコロニアル風。クラシックなところが敬遠されるんだろうか。


「先日までは、内外の工事関係者で一杯でしたが、ようやく落ち着きました。ごゆっくりお休みください」


 フロントの、たぶんオーナーだろうおじさんが、のんびりと言う。


「こちらへは、お仕事ですか?」


 部屋のキーをくれながらオバサンが続ける。


「ああ、デミゴッドブルクのルポをね。ぼくらは、夫婦そろってルポライターなんだ」


「それはそれは」


「静かさについては、スヴァルトアルムヘイム随一ですので、記事をお書きになるのにはうってつけです」


「よかったわね、ダグ」


「さ、お部屋へご案内いたします」


「どうも」


「ところで、オーナーさんたちは半神族じゃありませんね……」


 オーナー夫妻の表情が固まった……。




☆ ステータス


 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・300 マップ:14 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)


 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)


 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)


 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 


 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士


 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 


 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児


 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 


 

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