第105話『25トン対5000トン・2』


かの世界この世界:105


『25トン対5000トン・2』語り手:ブリュンヒルデ   






 ケイトが遅れた。




「届くと思ったんだもん!」


 プリプリしながら装填手のシートに着く。


「海の上では魔法は使えないんだ」


 ケイトは、ブロンズアローを巡洋艦に射掛けたのだ。陸ならばケイトの弓には魔力が籠っていて、数キロ先に迫った巡洋艦にでも届く。威力は無いが、それでも運よく射撃管制機にでも当たれば手りゅう弾を投げたほどの効果はあっただろう。ケイトの矢は、五十メートルほど先の海面に水しぶきをあげることもなくロストした。


 もっとも、四号の徹甲弾でも巡洋艦の装甲はぶち抜けない。レーダーや射撃管制機を破壊して命中精度を落としてやるか、ブリッジの戦闘指揮所を破壊するくらいしか手が無い。


 もっとも敵も同様で、クリーチャーを使うわけにはいかない。シリンダーもプレパラートも潮風と海水の海の上では存在できない。要はアナログな射撃戦をやるしか手が無いのだ。


「榴弾でいきましょう」


 タングリスが予想外の意見具申。


「機銃の装甲も貫けないぞ」


「見かけは派手ですから」


「ケイト、榴弾だ!」


「ラジャー!」


 弓の無念さを晴らすようないきおいで榴弾を装填するケイト。


「距離7000 方位角60 時差を5シュトリヒとして……照準完了!」


「テーーー!」


 ズシンと振動があって、初弾が撃ち出された。


 距離7000と言えば、戦車の有効射程距離を大きく超えている。的が巨大な巡洋艦であるとはいえ命中は期しがたい……数発撃って命中弾が出ればいいと思っている。


「敵艦の煙突基部に命中!」


 初弾で命中というのは運以外の何物でもないが、味方には励みになる。シュネーヴィットヘンの艦内から歓声が巻き起こった。


 二撃目で敵の艦載艇を破壊、木造船なので良く燃える。なによりの効果は、武装していないとタカをくくっていた輸送船から砲撃を食らったことで、敵が狼狽えたことだ。Mの字の谷に当たる貨物デッキから発砲しているので我が四号の位置を掴めないでいる。


 船長は、この混乱を利用して巧みに射撃を躱していく。


 しかし優位に立てたのは、ほんの五分ほどだ。


 船足が倍ほどに違う敵艦は距離五千まで詰めてきて、左舷の船腹を中心に命中弾が出始めた。


「徹甲弾に切り替え、ブリッジを狙え!」


 我ながら的確な指示を出し、我が方の射撃制度はいやましに高まったが、いかんせん75ミリの威力は知れている。




 ドッガーーーーン!!




 貨物デッキに命中弾を食らった。25トンの四号が一瞬宙に浮いた。


 敵弾は150ミリだ、超重戦車マウスの主砲並みだ。当たればひとたまりもない……。




☆ ステータス


 HP:7500 MP:44 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)


 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)


 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)


 白魔法: ケイト(ケアルラ) 


 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士


 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 


 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児


 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 


 

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