第104話『25トン対5000トン・1』


かの世界この世界:104


『25トン対5000トン・1』ブリュンヒルデ    






 敵襲! 敵襲!




 穏やかな帰還船の中を「敵襲!」という軍隊用語がいたるところで叫ばれている。


 しかし、そのあとに戦闘配置を告げる指令は出てこない。シュネーヴィットヘンはロートルの輸送船であり、且つ休戦中なのだ、しかも、乗員は寄せ集められた復員兵たちだ、有効で統制だった反撃などできるわけがない。


 船は面舵一杯をかけ、左に傾きながら進路を変えていく。


 振り落とされないように手摺に掴まり、左舷前方を窺うと五千トンクラスの軽巡が相対速度四十ノットほどで急速接近してl来る。


「パラノキアの軽巡です」


 いつのまにかタングリスが斜め後ろから覆いかぶさるように立っている。忠実にわたしを護ろうとしてくれているのだが、ヤコブと偉そうに話した後でもあり、子ども扱いされたような気がする。


――本船は、攻撃をかわすために高速の之の字運動に入る、各員は振り落とされぬよう安全を確保せよ!――


 船長は逃げることと乗員の安全確保に専念するようだ。乗員の復員兵たちに戦闘力としての期待は無い。


 しかし、寄り合い所帯の復員兵とはいえ軍人だ、頭を抱えて手すりにつかまっているだけでは気が済まない。携帯している機関銃や携帯ロケット砲に小銃まで舷側に並べて敵わぬ抵抗をし始めた。


「ねえ、戦争は終わったんじゃないの?」


 ケイトが不安そうに聞いてくる。ケイトの上着の裾を掴んでロキが震えている。


「停戦命令に従わないやつもいるようだな」




 ズズッボーーーーーン!




 第二撃が飛んできた、六発分の水柱が船を挟んで立ちあがる。


「夾叉された、次は命中弾が出る」


「四号で反撃しよう!」


 テルが無茶を言う。戦車が相手ではないのだ、五千トン150ミリ砲六門、魚雷発射管二基八門の巡洋艦相手で勝てるものじゃない。


「ブリュンヒルデを捕虜にされるわけにはいかないだろ」


「わたしを狙っているというのか?」


「拿捕して正体を知れば敵は大喜びだろうな」


 くそ、わたし一人の為に千を超える兵士を道連れにしようというのか。


「貨物デッキに戦車が居るとは、やつらも思わないだろ、意外に混乱させることができる」


「やりましょう、姫は右舷中甲板のオフィサールームに、あそこは船内で一番安全です」


「タングリス、指揮官はわたしだろ」


 ギュっとまなじりをあげる。タングリスはため息一つついてOKを出した。


「みんな、四号に乗れ! 戦闘配置だ!」




 25トンの四号戦車と5000トンの巡洋艦の一騎打ちが始まった。


 


☆ ステータス


 HP:7000 MP:43 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)


 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)


 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)


 白魔法: ケイト(ケアルラ) 


 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士


 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 


 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児


 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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