第106話『25トン対5000トン・3』


かの世界この世界:106


『25トン対5000トン・3』語り手:ブリュンヒルデ     






 わた……が……って!




 小さいけれど凛とした声が車内に響いた。


「なんか言ったか、ポチ?」


 飼い主のロキでも砲撃音で意味までは分からない。


「んっもーーー!」


 ロキの耳の中に首を突っ込むようにしてポチが怒鳴る。ロキの耳たぶから出たお尻をプリプリ振るのが可愛い……が、邪魔だ!


「次発装填急げえ!」


「ラジャー!」


 ガキコーン!


 ロキが尾栓を閉じた勢いでポチは振りとばされ、砲塔の壁にぶち当たってわたしのレシーバーに絡まった。


「テーーー!」


 75ミリ徹甲弾発射の衝撃! 


「ムグ!」


 ポチはレシーバーのマイクとわたしの口の間に挟まってしまう。


「わたしが飛んでくから、わたしに照準してええ!!」


 車内にポチのボリュームアップした声が鳴り響く!


「や、やめ! 耳がキーーーンとする!」


「わたしが敵の弱点に張り付くから、狙って!」


 ポチはシリンダーの変異体で、どういうわけか小さな妖精のような姿をしている。攻撃力はしれているがポインターの能力があって人の注意力や向かってくるものを引き付ける力がある。これは、構って欲しい気持ちが増幅されたようなのだが、要は我がままな気持ちの発露なので日ごろは禁止させている。


「当たったら死ぬぞ」


「直前に逃げるもん!」


「ポ、ポチ……」


「ロキ、泣いてないで次発装填急げ!」


「ラ、ラジャー」


 ガキコーン!


「テーーー!」


 ドゴーーーーン!


 発射の衝撃が収まるとポチの姿は無かった。


 ドッガーーーーン!! ドッガーーーーン!! ドッガーーーーン!!


 立て続けに三発喰らって、船も四号も大揺れに揺れる。


 目に見えて船足が落ちてきた。敵船との距離は4000を切ろうとしている。次を食らったら持たないだろう……。


「敵船上にポチの反応!」


 ロキが震える声で告げる。


「敵船のどこだ!?」


 ロキが神経を集中させるが、動転していて正確に把握できない。


「敵艦主砲の砲口だ……」


 砲手のテルにも分かったようだ。


「当たれば、大打撃を与えられる……」


「撃たないで! ポチも死んでしまう!」




――わたしを信じて撃って!――




 ポチの想念が、わたしの頭にも響いた。




☆ ステータス


 HP:7800 MP:45 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)


 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)


 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)


 白魔法: ケイト(ケアルラ) 


 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士


 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 


 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児


 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 


 


 




 

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