第62話『メドューサに徹甲弾!』    


かの世界この世界


62『メドューサに徹甲弾!』    






 地図で見るとノルデン鉄橋に向かう道は東への直線だ。




 しかし、実際には微妙に蛇行しているし高低差もある。


 道の北側に時々ムヘン川が覗く他は、道の両側は草原か灌木林で、道の蛇行や高低差と相まって、地図で見るほどに見通しはよくない。


 時々、車載機銃や75ミリの主砲で榴弾を撃ったりする。


 見通せない向こうを警戒するためだ。


「2シュトリヒ先の灌木林、機銃掃射」


「2シュトリヒ先の灌木林、機銃掃射」


 タングリスの発声を復唱してトリガーを引く。


 タタタタ


 乾いた発射音、灌木林の中で火花が四つする。


「いい勘をしているな、岩か何かがあるぞ」


 火花がたつということは固いものがある証拠だ。


「少し左にも当ててくれ」


「承知」


 タタタ


 再び火花、けっこう大きな岩か金属の構造物がある模様。


「榴弾、撃ってみるか?」


「いや、徹甲弾にしてくれ」


 榴弾に手を伸ばしていたケイトが怪訝な顔をする。シュタインドルフを出てから徹甲弾など撃ったことがないからだ。


「装填急げ」


「徹甲弾装填!」


 測距用ペリスコープで照準を確認。他の乗員もペリスコープにかじりつく気配。


「テー!」


「テー!」


 復唱してトリガーを引く。ガクンと発射の衝撃、主砲尾部が後退してリロード。


 リロードの瞬間、装填手のケイトはへっぴり腰になる。主砲尾部のリロードから身をかわすためだ。


 最初のころはロキが笑った。その都度ケイトに頭を張られていた。


 今は笑わない。慣れたこともあるが、徹甲弾を撃つというイレギュラーなことに興奮しているのだ。




 ズッガーーーン!




 灌木林の中で爆発が起こり、火花と破片が舞い散って煙が上がる。


 戦車か?


 思った瞬間、人影がまろび出てきた。


 小柄で髪をなびかせながら道に出てくると、膝をついて頽れてしまった。


「女の子だ!」


 声を発すると同時に、ハッチを開けてロキが飛び出した。見えない糸で繋がったようにポチが続く。


「待て!」


 タングリスの制止も間に合わない。たった一日でロキは四号の構造に慣れてしまって自在に動けるようになったのだ。


「ロキを追え!」


 操縦席と通信手のハッチが同時に開いて、タングニョーストとブリュンヒルデが飛び出す。


 少女戦車兵の傍に寄って手を掛けたロキが、ストップモーションのように静止した!


「メドューサだ! ゴーグルをかけろ!」


 叫びながら飛び降りたタングリスはゴーグルをかけて走り出した。右手にはなにかを握っている。


 タングニョーストとブリュンヒルデは姿勢を低くして近寄ると固まってしまったロキを引き離しにかかる。


 メドューサはノロノロと起き上がろうとする、おそらく負傷しているんだろう。


 三メートルほどに近づいたタングリスはメドューサに跳びかかると背後から首をロックした。


 はっきり顔の見えたメドューサは哀願の表情の美少女だ。口をパクパクして命乞いをしているようにも見えるが、タングリスは斟酌せずに手にしたものをメドューサの口にねじ込んで飛びのいた。


 ドーン!


 メドューサの首が吹っ飛んで、肉片が四方に飛び散った。


 思わず口を押えるほどに凄惨な光景だったが、数秒後には肉片もろともメドューサのは消えてしまった。


「金の針を!」


 そうだ、石化を直すには金の針を打ち込むしかない。


 始まりの草原で仕入れた金の針をケースごと投げてやる。


「間近でやられたんできついなあ……」


 五本の金の針を使って、やっとロキは元に戻った。心配そうに飛び回っていたポチがすり寄って、やっと人心地がついたようだ。


「さ、おちついたら前進だ」


 車内に戻ろうとして気づいた。


 半身をハッチから乗り出したかっこうで、ケイトが石化していた……。




 


☆ ステータス(今回の戦いを終えて)


 HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・28 マップ:3 金の針:4 所持金:8500ギル


 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)


 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)


 


☆ ステータス


 HP:2000 MP:1000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・25 マップ:3 金の針:5 所持金:8000ギル


 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)


 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)


 


☆ ステータス


 HP:2000 MP:1000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・25 マップ:3 金の針:5 所持金:8000ギル

 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)

 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)     二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)   今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 

 ヒルデ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘

 タングリス        トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係

 ロキ           ブァイゼンハオスの戦災孤児

 ポチ           ブァイゼンハオスの子どもたちが飼っていたシリンダーの幼生


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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