第14話『あ あれ?』


かの世界この世界:14


『あ あれ?』    






 戻って来たのかと思った。




 だって、同じ鳥居の前だ。


 時間は……たぶん昼? 


 鳥居も自分の影も真下にある。


 ……爽やか……南中したお日様に猛々しさはない、むろんお日様を直に見ることなんてできないけど、イメージとしてはニコニコと穏やかに笑っている感じ。これは春か秋か?


 社務所に戻って聞いてみれば、現在(いま)がいつなのか分かる……でも、なにか憚られる。


 もう少し観察してからでないと、うかつには動けないという気がする。




 鳥居の柱に寄り掛かって周囲を観察。




 神社の前は昔からのお屋敷街で、見慣れた百坪や五十坪ほどが落ち着いたたたずまいで並んでいる。


 五月か十月ごろの鳥居の前……てことは学校行かなきゃ……でも日曜で休みとか?


 スマホでカレンダーを見ようと思ったが……え、このポシェット?


 いつものリュックじゃなかった。肩から斜めに下げたポシェットと言っていい小ぶりのバッグ。


 一瞬ためらったけど、自分が下げているんだから自分のだろう。


 あれ?


 ざっくりワンピにちょっとルーズなカーディガン……自分のじゃない。


 ドキッとして顔を触ってみる。


 ほんとは鏡で見た方がいいんだろうけど、とりあえず触った感触は自分だ。


 ポシェットを探ってみると、財布とハンカチとティッシュにもろもろ……スマホが無い。


 


 スマホが無いと、こんなに不安なものだとは思わなかった。




 落ち着け光子……家に戻ろうか? いや、もうちょっと考えた方がいい。


 チラチラと周囲に目を向ける。


 ちょっと違和感……道路の両脇を走っている電線が頼りない…………あ、光ケーブルが無い!


 子どものころ、電線に並行して走っている黒いらせん状が気になってお父さんに聞いたことがある。


――ああ、あれは光ケーブルだ。家のパソコンに繋がってるんだよ――


 そう教えてもらって、ひどく感心したことがある。




 ひょっとして昔にもどった?




 財布の中を確かめる、一万円札が二枚に千円札が……あれ? 夏目漱石だったけ?


 カードとかも変だ、なにこれ……テレホンカード?




 落ち着け。




 もう一度周囲を観察……振り返って神社の境内。


 あ、あれ?


 拝殿の脇にはポールがあって日の丸が掛かっているんだけど、その日の丸がおかしい。


 風に翻ったそれは、赤地に白丸!?     






☆ 主な登場人物


 寺井光子  二年生


 二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される


 中臣美空  三年生、セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長 

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