第15話『中島書店』


かの世界この世界:15


『中島書店』   






 ネガを見ているようだ。


 むろん日の丸のネガが赤字に白の丸なわけないんだけど、見事に赤白逆転なので、ネガの感じになってしまう。


 神社の宮司さんなんかに聞くのはNGだ。


 神社を離れて駅の方に向かう。


 人通りの多い方が安心できるという理由だけ。


 途中、小学校の横を通る。そうだ、校舎の屋上に日の丸があったはず……見上げたそれは、やっぱり白の丸だ。


 立ち止まっていると、下校途中の小学生に怪訝な目で見られる。


 エホン。


 軽く咳払いして、小学生とすれ違う。


 エホン。


 やつも咳払いして、ニタ~っと笑いやがる。


 構わずに先を急ぐ。


 駅に通じる商店街、抜けたところに中規模書店。


 あれ? うぐいす書店のはずなのに、中島書店になってる。


 レイアウトに変わりはないんだけど、レジや本棚が微妙に違う。


 つい本を手に取りたくなるんだけど、我慢して参考書などのコーナーへ。


 目の端に見えた受験参考書の背表紙は1988年○○大学と書かれている。


 


 たしか昭和だよ……25を引けば昭和~年に変換できる。授業で習った変換式に代入……昭和63年だ。


 わたしって賢い……よく見ると参考書の西暦の下に(昭和63年)と書いてある。


 違う、確かめるのは……地図帳だ。


 あった……学校の地図帳と同じなのに値段は三倍くらいのそれを手に取って後ろの方を見る。


 世界の国々の情報が国旗と一緒に並んでいる……国旗を知っている国なんてニ十か国ほどしかないんだけど、ザッと見た限り首をひねるような国旗は無い。


 問題は日本……やっぱり白の丸だ。


 スマホがあればググってみるんだけど、ここが昭和63年ならば、スマホはおろかパソコンだってあったかどうか。


 ましてネットカフェなんてあるはずもないだろう。


 他の本を読んだら……思ったけど、気力がわかず、そのままうぐいす……中島書店を出る。




 ぼんやり駅前を歩いていると急に電話のベルが鳴った!




 プルルルル プルルルル プルルルル




 え? え?




 首を巡らすと久しく見たことが無い電話ボックスの中で公衆電話が鳴っている。


 道行く人たちはNPCのように歩き去っていき、電話のベルに関心を示す人はいない。


 ファイナルファンタジー13で、公衆電話が鳴って、それをとったライトニングがヒントを聞いていたのが思い出された。




 もしもし、光子です!




 受話器を取ると、女神さまの声が聞こえた……

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