第8話『旧校舎の中廊下』


かの世界この世界:08


『旧校舎の中廊下』    






 それは予感していた。


 旧校舎の中廊下のドアは、みんな閉まっているのだ。


 授業に使われることが無くなって久しく、いくつかが部室として使われているらしいけど、それらもマイナーな部活で、人の出入りはほとんどない。


 ずっと奥の方だと記憶しているので、ギシ ギシ……板張りの廊下を踏みしめながら、手前のドアから試してみる。


 そして、一番奥のドアまで試してみるが、開くドアは無かった。




 予感はしていたんだけど、常識的な選択肢から試してみるのは性格なのかもしれない。




 二階?


 そう思って打ち消す。


 記憶をたどっても階段を上がったのは、最初に屋上を目指したときだけだ。


 真っ直ぐ屋上に上がり、迫って来る足音に耐えられなくなって飛び降りたんだ。


 一瞬、頭蓋骨が割れるイメージ、フルフル首を振って、廊下の奥に視線を戻す。




 そうだ。




 わたしの脳みそは段階を踏まなければ思い出さないようだ。


 ドアなんか開けていない。


 追い詰められて、ドシンと壁にぶつかって……


 奥の壁を叩いて、三か所目でビンゴだった。




 キャ!




 どういう仕掛けか、フッと壁が無くなって、タタラを踏んで転げ落ちた。


 ドサリと畳の感触、顔を上げると志村・中臣両先輩が座敷童のように座っていた。




「お帰りなさい」


「とりあえずは回避できたみたいね」




 曖昧な笑顔を向ける両先輩、まるでVRのスリラーゲームの一コマのよう。


 前回のことがなかったら、悲鳴を上げて気絶していただろう。




☆ 主な登場人物


 寺井光子  二年生


 二宮冴子  二年生、不幸な事故で光子に殺される


 中臣美空  三年生、セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生、ポニテの『かの世部』副部長

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