第26話 あみの夢
時刻は水曜日の十二時。季節は冬。
あみは家にいた。
「ん? なんだろ?」
Twitterを見てみると、一つの動画が流れてきたので気になって手を止める。
「これは……」
九に流れてきたから不意のことではあったけども、思わず再生ボタンを押す。
すると、それは神栖が買ってきたライトノベルのアニメの動画の二期だった。
「そういえば、二期放送中か」
そこには、『〇〇二期もいよいよラスト! とういうわけで、○○の作者さんインタビュー! 見どころを教えてもらいましょう』と銘打たれている動画があった。
もう、このアニメも終わる頃なのだろうか。
あみは神栖の影響でこのアニメのラノベを読んでいて、神栖と一緒に一期のアニメも見ていた。
内容は可もなく不可もなく、ふーんと思った程度だった。こういうのが男の子は好きなのだろうか。あみにはちょっとわからない分野だった。
その作者さんのインタビュー動画を見てみると、こんなことをその作者さんは言っていた。
『普段は作家作業忙しいですか?』
『忙しいですね、仕事もしながらなので……』
『ほう、ちなみに仕事はサラリーマンとかですか?』
『実は……医者をやっております』
この一言が聞こえたとき、「お医者さん⁉」と驚いて思わず声に出してしまった。
そう、実はあみもお医者さんになりたいなと思っていたのである。昔から、ずっと。
それは兄……神栖のためだった。
神栖は体が弱く、幼少期のことからいじめられていることを知っていた。そして、とある日、神栖が倒れてしまう。
このとき、あみは何もできなかった。ただ、救急車に運ばれていく神栖を見ているだけだった。それがこの上なく悔しかった。もう、あんな思いはしたくないと心から願った。
だから尚更、神栖が好きと言っているこの作品の作者さんがお医者さんと知り、気になった。まさか、ライトノベルと医者という繋がることのなかった世界が繋がったことで、さらに『医者』という存在が身近になった。
あみはこれからまずはその医者のこと、そして作品のことを知って行こうと努力する。そして、本気で医者を目指すようになる。もちろん、普段から勉強を頑張っていて、そこを狙える位置にいた、というのもあるが。
本気で医者になりたい。そして、医者になって神栖を救いたい。本気でそう思った。
それは高校二年生の春のことだった。
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