006 キス×キス×キス

 一人だけ置いていかれている状況だったエゼクに気が付いたガウェインは、一度部屋を出て、あるものをもって戻ってきた。

 ガウェインは、手に持っていた鑑をエゼクに向けていた。

 

 エゼクは、突然のガウェインの行動に首を傾げたが、素直に向けられた鑑を見たのだ。

 

 そこには、不思議なことに傷のない顔が映し出されていたのだ。

 それを、目を丸くして見つめるエゼクだったが、未だに手に握られていた木彫りの人形を思い出して、この不思議な現象について理解したのだ。

 

「まさか……。この人形は、姉上の?」


 エゼクがそう言うと、リアムがそれに答えていた。


「はい。私がアンリ姉様に、エゼクさんとキスできないことを悩んでいたら、願いの叶う人形だって、くれたんです……。あっ!!」


 そこで、ついキスのことを相談していたことまで話してしまったリアムは口を手で押さえていたが既に遅かった。

 

 色々と察した、エゼクは、リアムの頭を優しく撫でた後に身を屈めて、視線を合わせて言ったのだ。

 

「すまない。意気地のない男で……。でも、リアムを好きな事だけは自信を持って言える。待たせごめん」


「いいんです」


「ありがとう」


 そう言ったエゼクは、今度はアンリエットに視線を向けて言っていた。

 

「姉上も、ありがとうございます」


「いいんですよ。うふふ。リアムちゃんは、義妹いもうとですからね」


 そう言って、ニコニコと微笑むアンリエットに心から感謝を向けたエゼクは、次に続いたアンリエットの言葉に驚きの声を上げていた。

 

「それに、一緒に住むのだから、お互いの悩みを解決したほうがいいと思いましたし」


「えっ?一緒に住む?」


「あら?リアムちゃんから聞いてませんか?」


「えっ?」


「うふふ。姉様がリアムちゃんのお家に住んでいることで、色々と目に毒な事が多いらしくて……。それで、今日からうちに住めばいいと私が提案しました。ガウェイン様も、賛成してくださいましたし」


「えっ?目に毒……?っ!ジェシカか!!さまか、あいつ……、ローグに手を……?!はぁぁ」


 色々と察したエゼクは、大きなため息を吐いてから、リアムに向かって言ったのだ。

 

「色々とすまなかったな……。ジェシカは、色々と本能で生きているところがあるから……」


「いいえ……。だ、大丈夫です……」


 そう言って、何かを思い出したのか、顔を真赤にさせてしまったリアムは深く俯いてしまっていた。

 

 

 気がつくと、気を利かせたガウェインとアンリエットがリビンクから居なくなっていた。

 二人の気遣いに感謝しつつ、リアムをソファーに座れせていた。

 

 そして、肩を並べてピッタリとくっつきながら座っていた二人は、もっと近づきたいと言う思いから、自然と唇を合わせていた。

 優しく触れるだけのキスを繰り返す。

 

 リアムがキスに慣れてくると、唇を食むようにヤワヤワと、リアムの下唇で挟んでいた。

 

 そして、舌先で唇を軽く舐めてから、ゆっくりと唇を離していった。

 

「愛してる。だけど、時間はたくさんあるんだ。急がずに、ゆっくりとリアムには色々と知って欲しい。いいかな?」


 そう言われたリアムは、キスでぼーっとする頭で頷いていた。

 

「はい。私、エゼクさんから色々と教えて欲しいです……」


「ああ。可愛いリアム。大好きだ。愛してる」


「はい。私も、エゼクさんのこと大好きです。愛しています」


 そう言って二人は、何度も触れるだけのキスを繰り返すのだった。

 

 

 

 

『番外編(エゼク×リアム編)』 おわり

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