003 キスまでの距離
メイドが用意したお茶をテラスで飲みつつ、エゼクがいなかった間のことをリアムは話していた。
今は、ローグではなく、リアムが食堂で働くようになっていた。
リアムは、エゼクと話しながらも、木彫りの人形を手で弄んでいた。
どうやって自分からキスをすればいいのかまでは考えていなかったのだ。
(う~~、アンリ姉様に、どうやって私からキスをすればいいのかも相談すればよかった……)
そんな事を考えていると、エゼクは眉を寄せてリアムの事を心配そうに見たのだ。
「リアム?もしかして疲れてる?」
そう言って、一人キスについて考えていたリアムをエゼクは心配してくれたのだ。
リアムは、自分からどうキスをすればいいのか考えていただなんて、恥ずかしいくて言えず、ただ頭を横に振って否定することしか出来なかった。
だが、リアムを人一倍大切にしようと思うエゼクは、体調でも悪いのかと考え、リアムの額に手を伸ばしていた。
「ちょっと、熱いかな?」
恥ずかしいことを考える、こんな自分を心配してくれるエゼクの事を思うと胸がキュンとなり、思わず瞳が潤んでしまったリアムは、顔を上げて言っていた。
「違うんです……。私……、私……、エゼクさんのことが好き過ぎて、いやらしいことを考えていました……」
そう言って、貰った人形をギュッと抱きしめて考えていたことを口に出したのだ。
それを聞いたエゼクは、一瞬目を丸くしていたが、次の瞬間には穏やかな表情で少しからかうような口調で聞いたのだ。
「くすくす。いやらしいことって?一体どんなこと?」
そんな事を聞かれるとは思っていなかったリアムは、一層顔を赤くして口をハクハクとさせていた。
「くす。そっか、口には出せないこと?」
そう言って、リアムの頬に手を添えて、優しく頬を撫でたと思ったら、額をコツンと合わせたのだ。
「俺も……、リアムと―――」
そこまで言ったエゼクは、ハッとしたように身を引いていた。
「ごめん……。忘れてくれ」
そう言って、距離を取ろうとするエゼクの服を掴んで、リアムは引き止めていた。
「どうして……?」
それだけ言うと、リアムは涙を溢れさせていた。
そして、苦しそうに言っていたのだ。
「私は、エゼクさんが好きです。その傷ごと、好きなんです!!」
そう言って、リアムは面頬の上からエゼクにキスをしていた。
リアムは、触れるだけのキスを面頬にした後に、勢いよく部屋を飛び出していた。
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