第3話
実はというと少しだけ期待していた。
けど「お兄ちゃん。もう朝だよ? ほら起きて」なんて定番な朝も存在することはなく、昨晩兄が好きだと恋愛相談してきた由希はいつものようにけろっとした様子で食卓に顔を出した。
「おはよう」
「おはよ」
うん、普通だ。すごく普通の由希だった。まるで昨日の出来事が夢だったかのように。
いや、あれはもしやギャルゲーのやりすぎで見た夢なのかもしれない。そう思いながら朝食を済ませて、着替えも準備も完了したらそのまま玄関へと向かうと、そこにはいつも先に行っているはずの由希が待っていた。
「一緒に行ってくれるんでしょ」
「お、おう」
どうやら由希は昨日のままの由希らしい。
こうして久しぶりに二人で通学路を歩く。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「恋愛相談していい?」
「またか」
「こういう時って何を話せばいいの?」
知らんがな。普通に兄妹の会話をすればいいのでは、と思う。
仕方なく、克則は考える。
「無難に、相手のことをいろいろ探ってみれば? 彼女いるのーとか」
「彼女はいるの?」
少しは自分で考えろとは思うが、小さく嘆息して克則は答える。
「いない」
由希は少し嬉しそうに頬を緩めた。だが、ここで男子としての悪戯心が発動してしまう。
さも当たり前のような態度を装い、
「でも、好きな人はいるぞ」
「え……?」
足を止め、由希はこの世の終わりかのような表情を浮かべた。
こいつ、どんだけブラコンなんだよ。お兄ちゃん、ちょっと怖いわ。
「嘘だよ、嘘。ほら、行くぞ」
「もう! お兄ちゃんのバカ! 私の恋心を弄んだ罰だ!」
言いながら克則の尻に強烈な蹴りが繰り出される。回避する術はもちろんなく、直撃すると同時に克則はその場で身悶える。
「お前な、本気で蹴るなよ!」
「お兄ちゃんが悪い」
「くっそぅ……」
「さらに罰として、もう一個、恋愛相談」
怒りながらも、恥ずかしがる由希の顔は少しだけ萌えると思ってしまう。
「今日、一緒にご飯を食べるのは、ありかな?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます