好きだった人と似ている彼女のことを俺は好きになってしまったのか


一学期が終わろうとしていた。最初あれだけ嫌だと思っていた高校生活は、思っていた以上の早さで進んでいく。それがいいのか悪いのか、それは分からない。


東雲さんとはよく話すようになった。今では同性の友達のように、気負わずに話せるようになった。


「結城くん、帰ろうよ」


「ああ」


帰り道が途中まで同じということで、下校も話しながら帰ることが多い。部活も入っていないので、帰る時間が同じというのも原因かもしれない。


「あ、夏祭り、今年はやるんですね」


「去年は確か大雨で中止になったんだっけ?」


「はい。私結構楽しみにしてたんですが……」


「誰かと行く約束でもしてたのか?」


「いえ、そういう訳では無いですけど、花火って夏の風物詩じゃないですか」


「まぁそうだけど」


「花は、季節を象徴する存在。でも、花火って、咲くのはほんの一瞬。そのほんの一瞬夜空に現れるだけで、人々の目が、耳が、心が、夜空に吸い上げられるって、とっても素敵なことだと思うんです」


普段は物静かなのに、たまにこうやって笑いながら嬉しそうに話す彼女を、俺は自転車を押しながら聞いている。再び起こる心臓の鼓動。もう誤魔化すことは出来ない。知り合ってほんの数カ月だけど、確かな気持ち。


でも、この言葉を伝えるには、今のままではダメな気がした。また同じ過ちをおかそうとしているのかもしれない。だが、それは。自分勝手で、傲慢、エゴイスティックだ。なぜなら…………












俺は好きだった人と似ている彼女のことを、好きになってしまったのだから。

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