第2話 赤(点)ずきんは騙されない
「ねぇ、おば(か)あさん、おば(か)あさんの頭はどうしてそんなに白くなったの?」
「それはね、赤(点)ずきん、あんたたちの学費が高くて、お金の心配ばかりしているからだよ」
(ウソウソ。ほんとはコロナのせいで皆、家にいるもんだから、セルフカラーリングができなかっただけ)
「ねぇ、おば(か)あさん、おば(か)あさんはどうして僕が着なくなったTシャツを着ているの?」
「それはね、赤(点)ずきん、あんたたちの学費が高くて、服が買えないからだよ」
(ウソウソ。ほんとはコレ、大きくて動きやすくて汚しても惜しくないから、エプロン代わりに着て料理するのにちょうどいいんだよね)
「ねぇ、おば(か)あさん、おば(か)あさんはどうしてそんなにシワが増えたの?」
「それはね、赤(点)ずきん、あんたたちの学費が高くて、美容にお金をかけられないからだよ」
(ウソウソ。ほんとは昔からずっと、ちゃんと手入れしてこなかっただけ。ただの横着者の経年劣化)
「ねぇ、おば(か)あさん、おば(か)あさんはどうしてランニングしてるのに痩せないの?」
「それはね、赤(点)ずきん、あんたたちの学費が高くて、糖質制限できずにご飯ばかり食べてるからだよ」
(ウソウソ。ほんとは夜中に内緒でひとり、高級スイーツつまみ食いしてるんだなコレが)
これくらい赤(点)ずきんに繰り返しふきこんでおけば、きっと洗脳できたに違いあるまい。フフフ……。
「赤(点)ずきんや。ところで大学はどこを希望するのかい?」
「それはもちろんA大学(学費の高いミーハー私立)!」
「えっ!? な、なぜ? なぜX大学(学費の安い堅実な国立)じゃないの?」
「X大学なんてマジ無理。あんなダサいのばっかなところ」
「なんですと? ダサいから行かないなんてあり得ないでしょ?!」
と、そこに、ふだんは赤(点)ずきんとはケンカばかりの兄が割り込んできて、
「いや、X大学はほんとにダサいよ」
「な、なんてこと言うのよあんたまで」
「やっぱ? あそこマジ、ダサいのばっかだよなあ?」
「うん。ほんと、そう」
なんでこんな時だけ意見が一致するのよ??
「ま、だいたい、赤(点)ずきんが行きたいって言っても受からないけど」
「そ。オレには無理」
なんでこんな時だけ怒らないのよ??
「だからA大学~♪」
「A大学も赤(点)ずきんには厳しいんじゃない?」
「んだとぅ?」
なんでそこだけ怒るのよ??
だいたいX大学なら地元も地元、なんなら定期代だって要らないくらいなのに!
学費もなんもかんもA大学の半額くらいで済むのに!
「行かないよ~ん絶対に」
「まあ、今さら赤(点)ずきんに5科目叩き込むのは無理だと思うよ?」
「だよ~ん」
……こうして今日もまた、
赤(点)ずきんの洗脳に失敗したおば(か)あさんは、諦めきれずに
赤(点)ずきん好みの可愛いアイドルでもX大学にいてくれればいいのに……
などとボヤきながら次の手を考えつつ眠りにつくのでした。
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