ミッション3 お隣の領主と仲良くしよう

第7話 天才による堆肥大作戦


「どういうことだ!?」



 俺は怒りのあまり朝っぱらから絶叫する。

 シュリ達に教えられた情報で、隣の領主が意識不明の重態と聞かされたからだ。

 まぁ素人の作った薬だし、効き目が悪くてそうなる可能性は考えていた。

 それでも命が助かるだけマシだろう。



 だが俺が怒っているのはそこではない。

 情報によると、夜中に凶賊が忍び込んで毒を飲ませたという点だ。

 ペニシリンは毒ではなく、奇跡の薬だというのに!



「とんでもない陰謀だ! あいつら、おそらくペニシリンを秘匿して自分たちだけの物にする気だ!」



 この世界を良くするためなら、手柄を取られても俺は気にしない。

 そもそもペニシリンをゼロから作ったのは俺じゃないし。

 でも良薬を自分たちだけで独占し、あの薬を毒だと言い張る連中が気に入らない!



「どうする、秀也。シメるか?」



 毒島の言葉に俺は首を横に振る。

 今はそんなことをしている暇はない。

 少しでも鬼族の領地を豊かにせねばならないからだ。



「悔しいけど、それは後回しだ。まずは堆肥を作ろう! シュリの話だとこの地方は堆肥や肥料とか使ってないみたいだし」



 そう、この地方では肥料を使っていないのだ。

 ここは俺の出番だろう。

 俺の言葉に毒島が首を傾げる。



「堆肥? 肥料じゃなくてか?」



 どうやら毒島は堆肥と肥料の違いが分かっていないらしい。

 それは他のクラスメイトも同じようだ。

 しかたない、ここは俺が説明するしかないな。



「肥料は野菜の栄養のために土に混ぜたりするものだ。堆肥は野菜が育ちやすいように土を改良するものを言う。似ているようで違うんだ」


「そーなのかー」

「知らなかったぜ」

「さすが秀也、物知りだな!」



 俺の言葉に皆が感心の声を上げる。

 ふっ、これが偏差値40の実力だ。



 ちなみに堆肥には大きく分けて、牛糞や鶏糞を用いた動物性の堆肥と、雑草や落ち葉、米ぬかなどを用いた植物性の堆肥がある。

 とりあえず両方ともやってみるか。



 植物性の堆肥なら作ったことがある。

 材料は畑の土、米ぬか、雑草だ。

 鬼族は米を主食にしているらしいので、米ぬかは普通に手に入るだろう。



 作り方は、まず雑草や落ち葉に米ぬかを混ぜ合わせる。

 水をかけながら踏み潰し、そこに畑の土をかぶせて5〜6ヶ月ほど外に放置。

 カビ臭い匂いがせず、土の匂いがしてきたら完成!

 灰にした草木と一緒に使用すると、なお効果的だ。

 簡単だが時間かかるんだよな……。



 とにかく早く伝えた方がいいだろう。

 俺は作り方をみんなに細かく説明することにした。



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