第8話 天才による堆肥大作戦2
「なるほど、それは効果ありそうですね」
「さっそく試しましょう。さすがはシューヤ様です」
シュリが珍しく尊敬した顔を見せ、イバラさんが優しく微笑んでくれる。
なんかペニシリンを作ったときより喜んでないか……?
「ところで、動物のフンを使った方だけど……」
俺の言葉にシュリは表情が凍り付く。
表情を曇らせたイバラが恐る恐る尋ねてくる。
「えっと、本気でやるんですか……?」
「うん。だって肥溜めあるんだろう?」
本来なら糞を使った堆肥も数か月待たねばならない。
しかしシュリの話によると、この地にはかなり前から肥溜めが存在するらしい。
これならすぐに使えるだろう。
でも、俺は動物の堆肥を使った方はやったことないからよく分からないんだよな。
まあ、多少糞が混じってたとしても大丈夫だろう。
作物を洗えばどうにかなるんじゃないかな?
そう考えていた俺に、シュリが提案してきた。
「提案があります。その、敵に塩を送るという言葉がありますし、例の悪徳領主の畑で試してみませんか……?」
「シュリ様! 良い意見です。どうです? シューヤ様?」
シュリの意見をイバラさんが絶賛する。
その言葉に驚き、俺は声が出なくなった。
「シュリ……」
「は、はい……」
ドキドキした様子のシュリに俺は叫んだ。
「君はなんていい奴なんだ!」
「……は?」
さんざん敵対し、領地を荒らしてきた怨敵にこんな慈悲を示せるなんて!
俺はシュリを誤解していたようだ。
クラスのみんなも口々にシュリを絶賛する。
「シュリちゃん! アンタスゲーよ!」
「聖人、いや聖女か!?」
「可愛いうえに性格まで良いとかサイコーかよ!」
「あんたが鬼族の頭だからみんなついてきたんだろうな」
みんなの絶賛にシュリもイバラさんも目を丸くしている。
そんなに驚くことだろうか?
「よし! みんな、肥溜めに行って堆肥を持って来よう。そして隣の領地にプレゼントしようじゃないか!」
「「「おおおぉぉぉっーーー!!」」」
俺たちは、鬼族の案内を受けて肥溜めへと向かうことにした。
◇ side シュリ
肥溜めに向かったシューヤ様を見送りながら、イバラが近寄ってきます。
そしてどこか唖然としたイバラが私に質問してきました。
「あの、動物のフンを肥料にする話は聞いたことはありますが、特別な処理をしなければ使えなかったはずです。人糞はそういうの要らないのでしょうか……?」
「いるはずですよ。というか寄生虫とかもいるはずですし、最悪作物は全滅するんじゃ……」
発酵させてない糞尿は、植物にとってとんでもなく有害な物質はずです。
まあ、あそこまで自信満々だしどうにかなる可能性はありますが。
最悪、隣国なので失敗しても問題ないのですが、少し心が痛む気も……。
いや、痛まないか。
アイツら、不可侵の同盟を結んだのにさんざん裏切ったし。
川に毒を混ぜて来たりやりたい放題やってきたし別にいいか。
私は気持ちを切り替えます。
それにしても雑草を使った堆肥というのは効果がありそうです。
たしか耳長――エルフとか言いましたっけ?
彼らが似たようなことをやっていたはずですし、こっちは効果がありそうです。
作物の収穫量が上がるかもしれないことに、私は心を躍らせました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます