第2話 秀也の秘策 



 俺たちが色仕掛けに屈した瞬間、サイレンのようなものが響き渡る。

 美女たちに気を取られていて気づかなかったが、ここは砦の中のようだ。



「何だ!?」


「シュリさん、これは?」


「て、敵襲です! きっと不死王の配下が攻めてきたんです!」



 顔を引きつらせながらシュリが叫ぶ。

 イバラさんは玉砕を決めた特攻兵みたいな顔つきで小太刀を取り出し、周囲の女の鬼族の表情は硬い。

 とんでもない強敵のようだ。



 これは最悪、クラスメイトだけでも連れて逃げる必要があるか……?

 そう考えていると隣に毒島がやって来て、そっと俺に耳打ちした。



「秀也、お前ならみんな救えるはずだ。学園一天才のお前なら……」



 どこか縋るような視線に俺はたじろぐ。

 気づけばクラスメイトがじっと俺を見つめていた。

 しかたがないな。

 俺をふっとため息を吐くと、大きく声を張り上げた。



「しょうがないな! この天才に任せろ! 獅子堂学園一の頭脳を、学内で唯一偏差値40を超えている天才の力を見せてやる!」



 俺の言葉にクラスメイトは歓声を上げる。



「さすが秀也だぜ!」


「さすが偏差値40! 俺なんて30ねえよ」 


「よっ! 獅子堂学園一の知将! 今日も頼りにしてるぜ」



 仲間の声援を背にして、俺はシュリやイバラさんに向き直る。



「2人とも、全て俺に任せろ! まずは敵の顔を拝みに行こうか」




 ◇



 岩肌を背にした砦の前に、数百の軍勢が陣を敷いている。

 ホラー映画に出てきそうな幽霊っぽい怪物にゾンビが一杯だ。

 そして武具を身に着けた骸骨騎士に守られるようにして、銀髪の女性が佇んでいる。

 銀髪赤目のグラマラスな美女だ。

 おそらく奴が指揮官だろう。



「奴が頭か?」


「ええ、不死王の副官をしているシルヴィアですね。吸血鬼の真祖らしいです」



 シュリが憎らしそうにシルヴィアを睨んでいる。

 鬼族の男衆を全滅させた怨敵らしいから、シュリの怒りも分からなくもない。



 ふむ、ドレス姿ってことは戦士ではないのか?

 というか周りに漂ってる幽霊みたいなのって、物理攻撃効くのか?

 効かなかったら即ゲームオーバーなんだが……。

 一応聞いてみるか。



「シュリ。一応聞くがあの幽霊っぽいのって、剣とか拳の攻撃効かなかったりする?」


「幽霊? ああ、レイスのことですか。魔法か、属性武器しか効きませんが……」


「シュリ達は属性武器って何本持ってるの? あとレイスに有効な道具とかある?」


「……持ってないです」



 あっ、詰んだわコレ。

 ゲームだったらクソゲー確定。

 ゲーム序盤で、魔法も属性武器も持ってない勇者がエンカウントしていい敵ではない。



「秀也、どうするんだ?」


「秀也、いつもみたいに秘策を出してくれよ!」



 無理難題をいうクラスメイト。

 どうしろってんだ!

 せめて聖水でもあれば……、っ!?



 そう考えた瞬間、俺の頭脳が名案を思い付く。

 これを使えばアンデッド軍団など怖くない!

 まったく、ここまでくると自分の頭脳明晰っぷりが怖くなる。



「思いついたぞ! 奴らを追い払う秘策をな!」


「な、なんだってー!」

「さすが秀也だぜ」

「ふっ、さすが獅子堂学園一の知将の名は伊達ではないな」

「お前が味方で良かったぜ!」



「シュリ、飲み水ってあるか?」


「え? 井戸水がありますけど……」


「みんな。今から井戸のところまで行って、たっぷり水を飲むんだ!」



 俺の発言に、シュリ達は不思議そうに首を傾げた。




 ~次回予告~


 獅子堂学園一の天才、千堂秀也。

 アンデッド軍団に秀也の秘策が炸裂!

 次回、転移者達の体に秘められた聖なる力が放出される!

 お楽しみに!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る