第24話オーナーの居ぬ間に②

ざっくりとわかったことがある

ここは日本であること

ここは兵庫県であること

これらはリビングに置いていた封書で確認した

俺の家は大阪だ、仕事の都合で東京から引っ越してきた

さて、どうするか


「う~ん」


俺は考えた。家族に会いに行く、それは簡単なようで簡単ではない

兵庫県から大阪府まで何で行く?

車?いや人形では運転できない

電車?人形だけで乗ったら大騒ぎだ

徒歩?それは笑えない、何時間かかるのか


「くそ!詰んだ……」


俺はうなだれる。一番いいのは里美に連れていってもらうこと。


「けど俺の声は聞こえないし……」


あれから何度か話しかけてはいる、全て空振りに終わってしまった


「なぁミズハ。もうひとつあるで」

「?なんだよ」

「向こうからこっちに来てもらうんや!」


声も里美に聞こえないだけかもしれない


「おお!ならさっそく電話で……」


俺はスマホを持って無い、人形だから


「家電話使うか……」


俺は探した、だが……


「ねぇ!電話がねぇ!」


家電話は見当たらなかった


「そうか……今はスマホの時代だから家に電話ひかないのか……」


まさかの展開、無いものは無い


「くそ!詰んだ!!」


どうする、俺。どうするか、俺。


「……最終手段だ」


俺は辺りを見渡した


「なんかあるんか?ミズハ?」

「手紙を書く」


俺のこととこの住所を書けば家族は来てくれる


「でもなぁ……」

「なんや?」


辺りをざっと見たがたぶん、無い


「封筒と便箋どこだ?」


あと切手


「それこそ今時手紙書かないよな……」


LINEとかメールとかいろいろ便利なのはある


「くそっ!これも失敗か?」

「ミズハ、まだやで」


マリンが何かに気づいた


「なんだよ?マリン」

「里美の部屋にあったで便箋と封筒」


俺は声をあげた


「マジか!マリン!!」

「ああ、ちゃんと見たで。間違いない」


それなら……


「手紙が出せる!…あっ、でも切手……」

「心配せんでええで、切手もあったわ」

「よっしゃ~!」


なぜあるのかはこの際気にしない


「なら里美の部屋に戻るぞ!」

「そやな、善は急げや!」


俺とマリンは急いで二階へと戻った

そして手紙を書いて出した

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