第23話オーナーの居ぬ間に①
俺は探索をしていた
人であったときなら何てこと無い一軒家なのだろうが今はドール、つまり人形。見える世界が違う
「~♪」
俺は鼻歌を歌う。こうやって何も考えずにフラフラ出きるなんてドール様々だ
会社員の時は仕事仕事でそれどころではなかった
「なぁミズハ、なにすんや?」
オールバックの人形、マリンが話しかける
「別に何も」
俺は階段をおりる
背丈が小さくなったからか階段の段の高さが今一つ掴みにくい
「何でもないから無駄に時間を使う」
「なんやそれ」
「マリン、時間を無駄に使うって贅沢なんだぜ」
俺は後ろ向きになり、階段の縁を持ちながら段をおりる
「あの部屋に籠りっきりなんて気が滅入るだろっと」
俺は器用に段をおりる、この調子なら一階に行けそうだ
「あっ、まちーや」
マリンも俺に続く、二人揃ってゆっくり階段を降りていく
「……よし!」
俺は一階に辿りついた
「……よっと、なぁ何すんや?ミズハ?」
「うっせーな、散歩だよ、さ・ん・ぽ」
俺は人形になって初めて一階に来た
箱に入った状態で来たことはあっても箱の中からは見えなかったから今回が初めてだ
「へ~、里美家綺麗にしてるんだ」
リビングにソファー、結構広い
「こんな広い家買えるのか……?実家?」
そこまで思ってはっとする
「マリン!何でもいい、物陰に隠れろ!」
「なんや急に?」
「いいから隠れろ!」
俺とマリンはソファーの後ろへ隠れる。すると台所から里美の母親らしき人物が出て来る
「あっぶね~」
俺は深呼吸した
「なぁ、あの人誰や?ミズハ」
「たぶん里美の母親だ」
「へえ~似てへんな~」
「いいからここから考えるぞ!」
母親がいたらぐーたらできない、いや一階じゃなければ出きるのだかここまで来てまた二階に戻るのはいやだ
「ぐっ……どうするか」
「別にどーもせんでええんちゃう?」
「何でだよ!」
「なんか出掛けるみたいやで、あの人」
マリンの言う通り母親は鞄を持ち出した
冷蔵庫に貼ってあったメモを持つ、買い物か
「よし!」
俺はガッツポーズをとる。やったぞ!これで自由だ!
「なぁミズハ。何すんのやて」
「ゴロゴロしつつ散歩だ!」
ドールニート生活を満喫するのだ!俺は!!
そうこうしているうちに母親が家から出ていく
リビングには俺とマリンだけになった
「よし!帰って来ないな」
俺はそろりとドアを確認する。よし、開かない
「はーーーー、やっと落ち着いた~」
俺はソファーによじ登ってため息をついた
「なぁ何が楽しいんや?」
マリンも続いて登ってくる
「これから楽しくなるんだよ!さて、と」
俺はテレビのリモコンを探す
ソファーの前にある机の上に発見した
「ピッ」
音を立ててテレビがつく
「何見るんや?」
「ん~、とりあえずニュースかなぁ?今の状況知りたいし」
俺はニュース番組へとチャンネルを変える
「お、事故かいな」
「交通事故か……」
画面にトラックと乗用車の衝突事故を報道する映像が映る
「あちゃー、死んだんかいな」
1人死亡、トラック運転手が逮捕、そんなニュースだ
「……」
そういえば俺も事故死なんだよな……
画面に遺族が映る。涙ながらにトラック運転手を責めていた
「……どうなんだろ」
俺の遺族、もとい家族はどうしてる?どう思った?今なにしてる?塞ぎこんでいないか?
「……」
じわじわと隠していた気持ちが溢れてくる
ドールになってから家族のことを忘れたわけじゃない。26年一緒だったのだから
「……くか」
俺は呟いた
「よし!そうと決まれば行動だ!」
横で驚くマリンを尻目に叫ぶ
俺は家族に会いに行く。決定だ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます