第12話野外撮影

「う~ん、行けるよね?」


里美は空を眺めていた


「たまたまの休みに何する気だ?里美」


俺は不思議に思った

俺の声は聞こえないらしい里美、ひたすら空を眺めてはぶつぶつ言っていた


「よし!実行あるのみ!」

「えっ?」


俺は素早く鞄の中に詰め込まれた



「なぁ、これどう言うこと?」

「何って撮影ちゃうか?」

「懐かしい~昔よく行ったよね~」


俺はあのあと外に連れだされた

マリン、チャイもいっしょだ

俺たちは外の芝生の上に立たされていた


「よいしょ!」


里美は色々鞄の中から出す

カメラ、三脚、ライト、スタンド、あと白い傘?


「…なぁあれなんだ?」


俺は傘を指さした


「何かに使うんやろ?知らんけど」


おいおい

里美は手際よくセッティングする


「よし!あとは画面越しで確認して……」


里美は長いレンズがついた一眼レフを覗いた


「……」


俺はなんとなくその場の空気に飲まれて黙った


「……違う」


里美は素早く俺のポーズを変えた


「こうかな?」


なんて言いながら


「なんだか嫌な予感がするぞ……」


俺の感がいっている、なんだかヤバい、と

そして的中した


「……ああ顔に影が入る」

「ああ服のシワが違う」

「ああ!ポーズが決まらない……」

「ああ!!ライト、ライト難しいぃ!!」


俺は小一時間程じっとしていた

はっきり言おう、しんどいと


「なんだかこんなこと多くないか?」

「撮影ってこんなもんやろ?知らんけど」

「うんうん、こんなもんこんなもん」


マリンとチャイはなんてこと無さそうだ

……なぜだ?しんどくないのか?


「……よしいい感じ!」


里美は勢いよく、そしてめいいっぱいシャッターを押す


「いいよ!いいよ!ばっちり!」


お前はどこのカメラマンだ


「動きが欲しい……」


何か呟き始めた


「マジか……」


里美は鞄から小型の扇風機を出した


「なんだ?それ」


里美はスイッチを入れた

充電式なのか扇風機は普通に動いた


「うおっ!」


風が顔にあたる金色の髪の毛が、白いワンピースの裾が暴れる


「いいよ!いいよ!」


だからなんなんだそのノリ


「よし、撮ろう!」


里美はシャッターを何枚も切った


「次は違う場所……」


いいかけて止まる


「どうした?里美……?」


俺も止まった、なぜなら人がいたから


「……」


その人は何も言わずに里美と俺、人形を見ていた


「……」


里美はしばらく固まったあと何ごともなかったように機材を回収した


「……あんた」


ビクっと肩を動かす里美


「……何でしょうか?」


平静を装って返事する里美。心臓はバクバクいっていた


「写真好きなのかい?人形撮ってたろ」

「……ええまあ」


当たり障りなく答えて立ち去ろうとする


「……そうか、頑張りな」


そう言って立ち去った

おじいさんだった


「なんなんだろう?」


立ち去る姿を見ながら里美は言った


「まぁそれよりも……」


里美はサクサク片付けて次のポイントに移動した



「次は池の近くか」


俺は言った。水面に周りの木が写りこんでいた


「よし!」


里美は一旦片づけた機材を出す


「今度は水面を生かした写真を撮りたいのよね……」


水面に機材と自分自身が写り込まないように神経を研ぎ澄ます


「ポーズ、ポーズ……」


俺はドール用の日傘を持たされた

かわいいレースでできた日傘だった


「ライト、ライト……」


白い傘をおく


「アングルどうしよう……」


あれこれ迷いながらシャッターを押す里美

気がつけばまた小一時間経っていた


「いい感じ!!」


水面に俺、人形が綺麗に写りこんだ画像を見て里美は満足そうに言った


「頑張った、頑張った私……」


あとはパソコンで加工して完成だ。


「これは絵になるな~」


満足そうにいっている中俺は、


「やっとか……」


疲れきっていた


「はぁ~」


座ろうとしてそれがまずかった


「うぉ!」

「へっ?」


俺はバランスを崩した、池にまっ逆さまだ


「いや~~~~!!」


里美が慌てて手を伸ばす

寸前で俺は捕まれた、だか……


「きゃ~」


里美は池に落ちた。俺、人形を頭の上に付き出す形で


「さ、里美……」


俺は池で水浴びしてる自分のオーナーに声をかけた


「ぷはー」


生きてた。さすがに溺れないか、浅いし


「セ、セーフ……」


里美は俺を濡らさないように池から這い上がった


「今が夏場でよかった……」


なんていいながら

里美は服の裾を絞る


「今日はここまでか……」


ぐったりしていた。まぁそうだろうな


「夕立が来るかと知れないって言ってたしもう帰ろう……」


里美はずぶ濡れになりながら機材と人形を片付け始めた


「でも楽しかった♪」


里美は満足そうに言った


「俺はもう勘弁して欲しいよ」


ちっちゃく言ったところで俺は鞄に詰められた

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