写真

 案の定、次の日に大学で会った森さんは、俺の話を聞いて悔しがった。

「ばれたかぁ~! もし長尾がびびって、ロクに見ないで引き返してくりゃ、本物の怪談が生まれてたかもしれないのになぁ」

「暇かよ! まー、一瞬ドキッとしちゃいましたけどね。とはいえネタがこうして割れたんだから、ラーメンおごってくださいよ」

 俺はそう言いながら、ホテルで撮った写真を森さんにどんどん送った。彼は苦笑いしながら、俺がナイトモードで撮影した写真を自分のスマホで見ていたが、ふとその長い指が止まった。

「ん? ちょっと待ってくれ。長尾、お前ひとりで行ったんだよな?」

「はぁ? ハイ」

「ここ、この後ろのドアさ、ちょっと開いてないか?」

 俺は森さんのスマホを、彼の肩越しに覗き込んだ。

 最後に撮った、引きの一枚だ。ツナギが立ち尽くしている廊下の向こうにはみっつのドアがある。そのうちひとつ、廊下の突き当りのドアが、完全に閉まっていないのだ。

「ほんとだ。気づきませんでした」

「なぁ、これってさぁ……人じゃないか?」

 ドアの向こうの暗闇を拡大し、森さんの指がそれをなぞる。俺は目をこらしてみたが、そこに人影があるのか、それとも指の動きがそう見せるのか、よくわからなかった。

「うーん……よくわかんないっすね。心霊写真と断言するには弱いかな」

「リアルに人間が潜んでたりしてな」

「うわ、そっちの方が怖いですよ! 絶対まともな奴じゃないし」

「だよなぁ。つーか俺、あのオブジェ設置するのに何時間もあそこにいたんだよな……もしかして、こっそりエンカウントしてないか?」

「なんかもう、森さんが一番ヤバい奴じゃないですか」


 こんな話をした後、俺は森さんと大学の近くのラーメン屋に行った。タダのラーメンはうまかった。

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