第8話

 ハリー国王主導の聖女救出作戦が大々的に行われました。

 ただ、私がバーン王太子と近衛騎士隊長を通じて強く献策したので、今手に入れている聖女を正直に報告して解放すれば、無罪にすることになりました。

 極刑でなく罰金刑で済ますと言っても、愚かでケチな大貴族や大商人は、全てを隠して逃れようと、生き残っている聖女候補を殺してしまう可能性があるからです。

 私は大貴族や大商人を全く信じでいないからこそ、彼らを無罪にすることを強く願ったのです。


 その効果はあったと自負しています。

 本当に多くの聖女候補が王家に献上されました。

 はらわたの煮えくり返るような怒りを感じる、残虐な行為を繰り返され、身体のどこかを失っている聖女候補や、正気を手放している聖女候補もいました。

 カーゾン王国だけでなく、他の国々からも聖女候補が買われていました。

 何とか無事でいられた私達は、親身になって彼女達の回復に努力しました。


 半年の間に、六度も聖女解放の勅命を出してもらいました。

 本来なら、王権が無視されていると認めるような、同じ勅命を二度だす事は、王家の名誉にかけて行わないものです。

 それを、わずか半年の間に六度も出してもらいました。

 同時に王都と国境の検問を厳重にして、聖女候補を王都外や国外に連れ出せないようにしてもらいました。


 私は、その間に自分達にできる事をしました。

 聖女候補の使える奇跡の技には個々によって能力差はありますが、誰もが積極的に治療を行い、軍資金を蓄えました。

 戦闘の才能がある聖女候補は、自分の戦闘力を伸ばしました。

 自由戦士を核にして傭兵を集め、独自の戦力を確保しました。

 

 そして今日、ハリー国王に新たな勅命を発していただきました。

 六度も勅命を出しているにもかかわらず、それを無視した者は、王族や貴族や神官にかかわらず、裁判なしに処刑するというモノです。

 誰もがこのいきなりの厳罰化に驚きましたが、一番驚いていたのはバーン王太子と王家直属軍かもしれません。

 私達聖女団が指揮官となり、王家直属軍を率いて、全ての王侯貴族や商人や神殿を臨検襲撃したのです。


 やはり、多くの者がまだ聖女を隠蔽していました。

 表向き王家に聖女を献上したように見せかけた者達も、幾人かの聖女を隠していたのです。


 私達は容赦しませんでした。

 王家直属軍の中には、大貴族や神殿と繋がっている者もいて、臨検襲撃を拒む者もいましたが、そんな連中は無視して、私達聖女候補が先頭に立ち、聖女傭兵団を指揮して情け容赦なく襲撃しました。


「勅命に背いて聖女を虐待していた者はこの場で殺せ。

 彼らの手先となっていた騎士団員も殺せ。

 奴らは勅命に逆らって謀叛人である。

 躊躇う者は同じ叛人とみなしてこのように殺す」


 私は検査襲撃に加わらなかった近衛騎士をその場で斬り殺しました。

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