第7話

「なんということだ!?

 聖女様をこのような眼に合わせいては、神々の加護を失ってしまうぞ!

 いそげ、急いでお助けするのだ!」


 バーン王太子の命令で、嫌々大商人や大貴族の屋敷を襲撃した近衛騎士隊長が、一転積極的に襲撃を指揮しだしました。

 最初に襲撃した大貴族の屋敷に、多くの聖女が捕えられ、筆舌に尽くし難い残虐な眼にあわされていたからです。

 近衛騎士隊長からすれば、貴族の風上にも置けない恥知らずな行為でしょう。


 私は最初名誉だけの問題だと思っていましたが、そうではありませんでした。

 大陸でも古い歴史を誇るソモンド王家には、他国や他の王家には伝わっていない、神々の性格や好みが伝わっていたのです。

 その中には、神々に選ばれた聖女に対する禁忌もあったのです。

 聖女を蔑ろにする国は、守護神に契約を解除されてしまうというのです。


 その話は、ソモンド王国ではよく知られていた事なのに、大貴族と大商人の中には、禁忌を破り自らを誇大に見せる事に満足する者がいたのです。

 今回バーン王太子が襲撃した大商人と大貴族は、そう言う愚か者達でした。

 この報告は、急ぎハリー国王に伝えられました。


 当然ですが、ハリー国王は大きな危機感を感じられたそうです。

 当然と言えば当然です。

 神々に選ばれた聖女に対する禁忌を知っていて、それを貴族や国民が破るのを放置する国王など、愚王としか表現のしようがありません。

 正直バーン王太子が王位を継いだ時が怖いですね。

 なにも考えず、悪意なく聖女を虐待するかもしれません。


 ですがそう考えると、糞ジョージを野放しにしているカーゾン王国が、アポロン神に見放されて先に滅びそうな気がします。

 それとも実際に聖女を虐待しなければ見捨てらえれないのでしょうか?

 現実に聖女を買って虐待していたこの国が見捨てられるのでしょうか?

 間に合ってくれていればいいのですが……


 まあ、少なくともバーン王太子の評判だけはよくなりました。

 競売場での凶暴な行動が、一転救国の英雄としての行動になりました。

 バーン王太子に配属されている、近衛騎士や近衛従士の私を見る眼が変わりましたが、今更彼らを信じる事などできません。


 そもそも、神々に選ばれた聖女に対する禁忌を知っていて、私達を買いに来たバーン王太子について来ていたのは、彼らなのです。

 今は正義感ぶっていますが、実際に暴君に命じられたら、聖女を購入する手先となっても平気だったのです。


 だから、私は私の信じる道を行きます。

 私より先に売られた聖女候補を助けるために、この国もバーン王太子も利用させてもらいます。

 

 


 

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