第3話
私の話を聞いた聖女候補達は、最初はなかなか決断できないようです。
まあそれはしかたがない事です。
この判断で生死が分かれるかもしれないのです。
生死にはつながらなくても、売春婦に落ちるか王宮の女官になるか、大きな人生の岐路に立っているのです。
「元気な者、大人は子供を手助けしてあげてください。
私は、このような幼い子が、男の慰み者にされるのを見逃せません。
さあ!
私達は聖女候補なのです!
聖女にふさわしい行動をしましょう!」
下劣なジョージ王太子が、私達を高値で売るために、付加価値を付けようと施した聖女教育であろうと、私達は本気で聖女になろうとしていたのです。
多くの人を助けられるような癒しの技を会得しようと、常に努力してきたのです。
考え方も所作も、聖女らしくあろうと学んできたのです。
だから、私の言葉は聖女候補達の心をうったようです。
「この子は私がお世話させていただきます」
「私はこの子をお世話させていただきます」
次々と聖女達が動き出してくれました。
恐怖で身動きできない幼い子を抱きしめ、声をかけてくれています。
大人でも、事の成り行きについていけず、茫然自失している聖女候補もいますが、そんな者にも気丈な聖女候補が声をかけています。
「ちい!
逃げ足の速い奴だ!
殺してしまうつもりだったが、逃げられてしまった」
バーン王太子が忌々しそうに吐き捨てますが、どこか嬉しそうです。
下劣とはいえジョージ王太子は、武神でもあるアポロン神様に守護された、カーゾン王家の一員です。
そんな相手が、戦う事もなく逃げ出した事に、自尊心が満たされたのでしょう。
「バーン王太子殿下。
聖女候補達の準備は整いました。
連れて逃げてください」
「おう、任せておけ。
いいかお前ら、馬車と馬を俺様に提供しろ。
これは聖女候補達が望んだ事だ。
つまり神々が望んだ事なのだ。
断ったり邪魔したりする者は、この斧槍の錆にしてくれるぞ!」
本当にバーン王太子は身勝手ですね。
自分も聖女候補を競売で手に入れるためにここに来ていたというのに、今では正義の味方のようにふるまっています。
しかも同じように競売に集まっていた者達を脅して、力づくで馬車と馬を奪おうとしています。
でも、バーン王太子がそんな人だからこそ、私達は助かるのです。
ここは自分達の価値をもう少し高めておきましょう。
「みんな、これからの生活費を確保しておきましょう。
持てる限りの金銀財宝や美術品を馬車に運んでください。
お金があれば売春婦に売られる事もないのですよ」
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