第9話
カンカンカーン!カンカンカーン!!
町中に警鐘が鳴り響きます。
「魔物がでたぞー!!!」
人づたいに話が入ってきます。
そして、どうやら魔物が出たのは廃棄物処理場の方向らしいのです。
しかも、大半の冒険者は通常の仕事に戻っていて町から離れています。
いるのは私のような低ランクの冒険者くらいでしょう。
「行きましょう。」
腰に備えた剣を押さえながら走りました。
案の定、場所は廃棄物処理場。
既に遭遇した奴隷の数人が亡くなっているようです。
「あんた!」
「緑さん!」
奴隷は名前を剥奪されるので私は彼の事を緑さんと呼んでいました。
「あんたも逃げた方がいい。あれはゴブリンロードだ。戦うには相手が悪すぎる!」
「ロード…。」
ゴブリンロードは、討伐するには単独ならBランク、パーティーならCランク相当の魔物です。
今の私には荷が重いかもしれませんが、時間を稼ぐことに徹すれば、ここに釘付けにはできるでしょう。
「緑さん、私が時間を稼ぎます。」
「正気か!?あいつの太い腕を見ろ!俺達なんて一発だぞ!?」
「大丈夫。それよりも早く避難してください。」
「お、おう。」
ゴブリンロードが建物の角を曲がってこちらに近付いてきました。
剣を抜いて意識的に呼吸を切り替えます。
一歩の距離にはまだ遠く、その分相手もこちらをとらえてはいません。
なら、更に深く。
取り込んだ空気から酸素だけを残して排出しながら、体内の酸素化を加速させ肉体の制限を一部解除する。
ゴブリンロードにそんなことを知ることはできず一歩、また一歩そのゴブリンよりも2回りは大きい体が近付きました。
まだ、50メートルはある…だが、訓練の時と同じ感覚………いける。
技能・心体技
戦技・無影斬
確信をもって踏み込み、ゴブリンロードに一太刀浴びせました。
よし!
直ぐに距離をとって撹乱を…。
「し、信じらんねぇ…。」
私の後ろでボウリングの玉が床に落ちたような音がしました。
「居なくなったと思ったら、あのゴブリンロードを………倒しやがった。」
首と胴を泣別れにした一撃によってこの騒動に決着がつきました。
「おーい!」
離れていた緑人さんが走ってやってきます。
「なんとかなりましたね。」
「………はぁ、色々言おうと思っていたが、何か言う気にならなくなった。…それで?これからどうするんだ?」
「あれだけの騒ぎです。そのうち、ギルドから人が来ますよ。それよりも問題はこんな魔物がどうして現れたか、です。」
「ふむ。ならば宛はある。」
「え?」
「そこの汚れよ。他であれば風で風化させたりするが、それがここにはない。」
「洗い流せばよかったと?」
「そこまでせんでも、清掃していれば…いや、奴隷にそれを求めるのは無理か。」
「残って証言してくださいね。」
「はっ、お主こそ、今までの生活を送れると思うなよ?」
ですが、この騒動が次の騒動の呼び水となってしまいました。
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