第14話 鍋増産
お夕飯が終わったら、アイラは寝る時間。
体力切れで倒れたりもしていたけれど、すでに夜の九時。
私は仮眠をとったばっかりなので、ちょっぴり夜更しして穴を広げるつもりです。
アイラは体力増量大作戦に則って、たくさん体も動かしているから、こんな環境でもきっとぐっすり眠れるだろう。
――……永眠にならないように、温度管理を気をつけないと。
壊れてしまった青土のトンカチとタガネを追加生産しながら、ふと思い出して、”火魔法”で新しく覚えた”ヒート”について”検索”で調べてみる。
その結果はこちら。
・ヒート
火魔法レベル2
消費魔力×三十分間、レベル×1㎥の範囲の気温を周囲より五度上昇させる。
重ねがけ可能。
なんか、泣きたい。
”トーチ”だと消費魔力×十分しかもたないし、ピンポイントで希望の場所を暖められるわけじゃない。
しかも風が入ってきたら、折角の暖かい空気が逃げてしまう。
持続時間も、効果範囲も、全部負けてる!
あ、”ヒート”だと料理には使えないから、全敗って訳でもないか。
少し気を持ち直しつつ、折角なので穴の中に”ヒート”を二回。
これで、”トーチ”が消えるタイミングを気にしないで一時間の間は他のことが出来る訳だ。アイラ曰く、一時間魔法を使わずにいれば、魔力は5%回復するらしい。
少しだけど、回復の方が多くなる計算だ。
そういえば、この、魔力とか体力の回復を早くするようなスキルはないのかな?
思い立ったが吉日。
早速、”検索”さんに訊ねてみる。
”該当スキル、は、”回復促進 魔力”と、”回復促進 体力”、に、なります”
内心大喜びで希望のスキルの習得方法を聞いてみると、どちらを習得するのも同じ。『一時間の間、最大値の一割以下』という状態を繰り返せばいいそうだ。
気絶寸前をキーブですね。
スキルとして覚えるまでにどれくらい掛かるのかは分からなかったけど、あるということと習得方法さえ分かれば、それに沿って行動すればいいだけだ。
魔力に関しては、起きてる間ずっとカウントされそうだけど。
早速、”回復促進”を得るために、体力を消費することにしよう。
現在60残っている体力を消費するためにお手軽なのは、”錬金術”。
空になった大きなサイズの飯盒に青土を詰め込んで、早速ぐーるぐるとやり始める。
作るのは、”錬金術”に使う用の大きな土鍋。
今、代用品として使っている飯盒だと小さなものしか作れないからね……
最初に間違って作ってしまったラーメン丼の悲劇を、私は忘れない(予定)。
ちなみに、本当なら釜の方が良いのかもしれないけど、それは追々で。
ご飯を作るのにも使えそうな方を今回は優先です。
グルグルしているうちに、飯盒の上に光の粒がキラキラと光りながら浮かび上がっていく。
光が集まりきったその瞬間。
出来上がったものが具現化して、落下するまでに一瞬のタイムラグがある。
それが分かっていれば、落ちる前に受け止めるのはそう難しくない。今回は余裕を持って、出来上がった土鍋を受け止めた。
まずは、手の中に落ちてきた鍋をじっくり確認。
きちんと、蓋もセットでいい感じ。
ただ、ちょっと気になるのは青土の属性のことだ。
氷属性ってだけあって、なんだかとってもひんやりとしてる……
これ、鍋として使うのには向かない気がひしひしとする。せっかく作ったのに、使えなかったらどうしよう?
……いや、錬金術用で使えればそれでいいのか?
あわよくば、料理にも使いたいだけで。
ちょっぴりテンションが下がったのを自覚しつつ、気を取り直して土鍋を増産。
一つ作るたびにサイズアップさせていったせいで、最後に出来たのは抱え込むのが難しい大物になってしまった。錬金釜というのにはまだ力不足かもしれないけど、三十リットルも入れば割と自由に物が作れるね。
落ちてくる三十リットルの土鍋が大きすぎて受け取れないと気づいた瞬間、咄嗟に”データストレージ”を使った私は天才だと思う。
危うく、”データストレージ”の容量をオーバーしそうだったのはアイラには内緒なのです……
全部できあがった頃には”ヒート”が時間切れ。
魔力が回復しているのを確認してから、”ヒート”を二回追加しておき穴の中の拡張工事と称して、穴掘りをはじめた。
アイラの家庭菜園もどき用のスペースを作るためにも、穴を横に広げる必要がある。
畑、大事なので頑張るよ。
1時間ほど頑張ったところで欠伸が止まらなくなってきて、ギブアップ。
最後に”土魔法”の練習をしてから、”ヒート”を二回追加して――おやすみなさい。
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