第15話 ターキーとオニオンフラワーのリゾット
穴の中が寒くなるたびに目を覚まして、”ヒート”を掛け直して寝直すのを繰り返すこと四回目。朝の七時になって、空腹に耐えきれなくて目が覚めた。
思ったよりも長く寝た割に、魔力は回復しきっていない。どういう訳か、同じ条件で回復するはずの体力は全快だ。
魔力を使い切るようにして眠ったのに、最大値が増えてないのはなんでだろう?
もしかしたら、一度は上限まで回復させておく必要があるのかも。
後で試してみようと心に留めながら、朝ごはんのメニューを考える。
寒いから、体が温まるおじや……いや、リゾットとか?
ジャーキーが何種類かあるから、それを使えばタンパク質と塩分は補えるし、出汁としても十分だろう。昨日拾ったオニオンフラワーを玉ねぎ代わりに炒めてやれば、甘みも出るよね。
炒めるための油も、オイルウッドを使えば良し!
メニューを決めたら、早速、調理に取り掛かる。荷物の中から七面鳥のジャーキーを取り出して、キッチンバサミで大雑把にちょん切り、外で拾ってきた雪と一緒に小さい飯盒の中に投入。
調理用に”トーチ”を用意して、中を暖める。
これは、消えるまで放置しておけばいい感じに出汁がでるはず。
お次はオニオンフラワー。
アルミ製の飯盒にオイルウッドを削り入れる。
皮の部分は焚き付けに良いそうなので、別にとりおく。
新たに用意した”トーチ”で加熱して、シュワシュワと泡を出しながら溶けていくオイルウッドの匂いを確認。
……特に癖のある匂いではないかな?
面白みはないかもしれないけど、使い勝手は良さそう。
たくさん手に入るようなら、料理以外に暖をとるために使うのもいいかも。
ある程度溶けたところで、オニオンフラワーの処理に取り掛かる。
オニオンフラワーの可食部は花びら。
白くてしっとりしたバラのような花びらをつまんで、花の形を崩す。
観賞用としてもきれいなのに、ちょっともったいない。
花びらをバラけさせたら手で割いて飯盒の中へ入れ、手早く炒める。
フワッと微かに甘く香るのは、オニオンフラワーの匂いだろう。
なんだか、月桂樹に似た系統だね。
花びらが透き通ってしんなりしたら、一旦火から下ろして、お次は米の用意だ。
持ってきていたのは無洗米だから、オイルウッドを溶かした大きめの土鍋に、オニオンフラワーと一緒に放り込む。
油でお米の表面がコーティングされ、白っぽくなったらジャーキー汁の出番になる。
ここで、心の中の欲しい物リストに『お玉』と『木べら』を登録。
忘れないうちに作らねば。
御飯のあとにやることを頭の中で考えながら、焦げ付かないように土鍋をフリフリ。土鍋に、フライパンみたいな取っ手をつけておけば良かったと、只今絶賛、後悔中です。
途中で何度もジャーキー汁を足しながら丁寧に。
すでに、匂いが暴力的!
よだれで溺れ死ねそうです。
私のお腹が「ぐぅ~」と鳴くのに少し遅れて、すぐ後ろで同じ音がした。
チラッと視線を送ると、アイラが正座でスプーンを持ってすでにスタンバイ状態。
すぐ出来るよ、アイラ。
もうちょい待ってね?
味見をして、軽く塩を足したら出来上がり!
私の分はアルミの飯盒に、アイラの分はステンレスの小さい方の飯盒に装って準備は終了。残った分は大きな飯盒に入れて、冷めないように蓋をしておく。
おかわりが冷めきってたら、泣くしかないし。
「おまたせ、アイラ」
「なんか、すごくいい匂いがして目が覚めた……。何作ったの?」
「ターキーとオニオンフラワーのリゾット。熱いうちに食べちゃお」
「ん。いただきます」
言うが早いか、アイラは早速リゾットをスプーンにとるとフーフーと冷ましながら口に運ぶ。
「ほいひー!」
アイラは、はふほふと口の中を冷ましつつ、幸せそうに笑み崩れる。
「それは、作ったかいがあります」
彼女のストレートな賛辞が嬉しくて、自然と笑みが浮かぶ。
……うん。
お味もまずまず。
今日も、美味しくいただきます!
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