第12話 植物採取

 最後に”火魔法”を使って、強制的な眠りに落ちる。


””火魔法”の、レベルが、上がりました。新たに、”ホット”、を、使えるようになります”


 意識が落ちる前に聞こえたのは、検索さんによく似た声のアナウンス。なんだか、使える魔法が増えたらしい。






 軽くゆすられて、アイラの声で目が覚めた。

スッキリ爽快。

穴掘りを頑張って疲れていたはずなのに、びっくりするほど体が軽い。


「おはよう、アイラ」

「おはよ、レイちゃん。”水魔法”、使えるようになったよー!」

「すごい! 私も、寝る直前に”火魔法”がレベル2になった」

「すごいすごい」


 起き上がって、互いの成果を讃えつつ、内容を確認し合う。

残念なことに”水魔法”で生み出せる水は、飲むのには適さないらしい。

その代わりに、植物の成長を早めてくれる効果があるそうで、アイラの”ファーム”スキルと相性が良さそうだ。お野菜が、早く育ってくれるのはいいことです。

更にアイラは、随分と頑張って出入り口の拡張を終わらせてくれていた。

もう、感謝しかない。


「穴は広がったけど、代わりに道具はどれもお亡くなり」

「材料も土だけだし、また作ればいいよ」


 そんな話をしつつ、早速、防寒装備を整えてから外へと繰り出す。

あんまり寒いと、耳や鼻がもげるって聞く、想像しただけで怖すぎる。

取れる対策なんて、タオルを頭と顔にぐるぐる巻く程度だけど、ないよりずっとマシはなず!

熱が逃げないようにと出入り口にぶら下げたレジャーシートをくぐり抜け、緩いS字型の通路を這い出た先は、アイラが最初に言っていたとおり、一面に広がる雪景色だ。


「これは……壮観」

「なんか、風の関係でこの辺りは雪が積もり辛いみたい」


 そう言いながら、アイラは背後を見上げる。

彼女の視線を追いかけてそちらに視線を向けてると、そこには高い山の姿。

私達がいるのは、その山の裾にあるちょっぴり凹んだ部分にある横穴らしい。


「こっちに一応トイレを作ってみた」


 そう言って彼女が指す先には、申し訳程度の高さの壁(?)に囲われたスペースがある。どうやら、底に穴を掘ってトイレとして使う予定らしい。

早速使わせてもらったんだけど、そこで心臓が止まるほど驚いて、危うくお粗相してしまうところだった。

あるはずの無かったものが付いてるんだよっ!?

大事件です!!


 難は逃れたけど、何も言ってきてないってことはアイラは気づいてないのかな?

同性だったはずの相手が、寝て起きたら異性になってるのって、かなりな事件だと思う。くっつきあって寝てたし。分からないはず、ないよね?

私? 私は、アイラを生き残らせるために何すれば良いのか考えるのにいっぱいいっぱいで、それどころじゃなかった。

……アイラも一緒か。自己完結しつつ、彼女の元に戻り、軽く周囲を探検しに行く。


「雪だけかと思ったけど、意外とそうでもないのね」


 アイラの言う通り、穴から少し離れた場所には、意外なことに背の高い植物が群生している上、小さな木立まである。


「食べれるものがあるかも。探さない?」

「生き残るためには大事よね。ちょっとずつ集めてみよっか。採ったやつは、”データストレージ”に放り込んで、穴に戻ってから”検索”ね」


 ”データストレージ”なんて、頭からすっぽ抜けてたよ。


「袋をとってこなきゃと思ってた」


 そう呟きつつ、採れそうなものを手分けして集めていく。寒いから、長い時間は外にいられない。ある程度集めたところで、大急ぎで穴へと戻って”トーチ”を連発。

ちょっと、穴の中が暖かくなってやっと人心地がつく。

そこにアイラが、採ってきたものを確認するために必要だと思ったのか、消えていた明かり灯してくれた。


「じゃ、早速調べてみよっか」


 穴の中が暖まってくると、さっさと防寒装備を脱いだアイラは早速”データストレージ”の中から採ってきたものを取り出していく。


「その前に、ちょっと水筒の中身を温めておかない?」

「あー……そうしてもらえると、めっちゃ助かる」


 結局、十分ソコソコしか外には居なかったのに、体の芯まで冷えた感じ。穴の中も寒いと思ってたんだけど、風が通りづらい分、外よりは暖かいんだなと納得した。

水筒に入っていた麦茶を飯盒の中に移して、”トーチ”で作った火のそばに置いて温め始める。固形燃料は、別に使いどきがあるかもしれないからしばらく出番はない。

”火魔法”で対応できるうちは、そっちを優先的に使えばいいよね。

魔力は寝れば回復するけど、物資はそうもいかない。


 それはそれとして、後で雪を入れておく容器も作ったほうがいいかも。

暖を取るために火をつけるんだし、そばに置いておけばいつでも水が使える状態になる。どちらも無駄にならないし、一石二鳥で素敵かも。

ついでに、お弁当を火のそばで温めつつ、採ってきたものの確認を始める。

採ってきた植物は、どれも白~水色で見ているだけでも寒々しいイメージだ。


「食べられるものがあるといいねぇ」

「ほんと、切実に……!」


 食べれるものが身近にあれば、手持ちのお米を節約しなくても済むようになる。

ほんと、切実です……

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