第10話主人公視点

「うわぁぁぁぁぁぁぁ、聖女様だぁぁあぁあ!」

「聖女様、おかえりなさぁあぁあああい」

「聖女様ぁああああ」


「神獣様だぁああああぁぁあ」

「神獣様おかえりなさぁあい」

「神獣様ぁああああ」


 私とフェンリル様の帰りを、子供達が歓声で迎えてくれます。

 とても心がウキウキします。

 帰りを待ってくれている人達がいる、それがこれほど幸せな事だと、奈落に落とされて初めて知りました。


「「「「「お帰りさないませ、神獣フェンリル様、聖女ローザ様」」」」」


 大人達が緊張しながら出迎えてくれます。

 少々可哀想な気もしますが、しかたないですね。

 彼らはフェンリル様のお目こぼしで生かしてもらっている存在ですから。


 私には彼らに対する敵意などありません。

 むしろ可哀想な人達だと思っています。

 ですが、神々の感覚は違うそうなのです。

 神々の基準では、人間の区別は、加護を与える者とそれ以外の者なのだそうです。


 私は聖女ですから、加護を与えるべき者だそうです。

 神様と契約した建国王も、加護を与えるべきものだそうです。

 王族はあくまで建国王のおまけで、温情で護ってやっているだけなのだそうです。


 ですから、加護を与えるべき対象でもない人間が、私のような聖女や聖者を傷つける事は、絶対に許せない事なのだそうです。

 私から見れば巻き込まれた不幸な民も、神様から見れば邪悪な者の言いなりになっている、手先でしかないそうです。


 私が真摯に祈りお願いしたことで、私に仕えると約束した大人と、私が養子とした子供だけは助けてくださることになりました。

 助けるとはいっても、目こぼししてくださるだけで、何かをしていただけるわけではないのですが、少なくとも私の作った魔法薬が効果を表すだけで十分です。


 ここ以外は、地上もダンジョンも地獄になっています。

 エイル神が人間を見放した事で、全ての魔法薬が無効になりました。

 ヴェネッツェ王国だけではなく、大陸中で魔法薬が使えなくなっています。

 そこにアポロン神の広めた疫病が蔓延しているそうです。

 ヴェネッツェ王国だけではなく、大陸中に広まっているのだそうです。


 恐らく、人は滅ぶことになるでしょう。

 ここにいる子供達以外は、死に絶えるかもしれません。

 少々可哀想な気もしますが、心の奥底には、ざまあ見ろと言う気持ちもあります。

 私を殺そうとしたのは、人の世界です。

 フェンリル様が助けてくださらなければ、確実に死んでいました。

 そんな世界を救いたいと思うほど、私は偽善者ではありません。


「わぁあああ、フェンリル様とお昼寝ぇええええ」


 子供達がはしゃいでいます。

 フェンリル様が少し大きくなられて、全ての子供達を毛並みで抱き温めてくださるのです。

 子供達はフェンリル様の毛並みに包まれて眠るのが大好きです。

 私も大好きです。

 余計な事など考える必要もありませんね。

 人間に慈愛を施す神がおられたら、ここ以外でも人間は生き延びるでしょう。

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真銀の聖女は極悪令嬢に奈落ダンジョンに突き落とされましたが、ダンジョンの聖女になりました。地上は滅べばいいのです。 克全 @dokatu

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