第1章 その3
「ごめんなさい。今、レベッカさんにご
翌朝、
受付の台
朝の
こういう時は、思いっきり
「そう……仕方ないわね」
「で、でもパーティを組まれるなら……。ほ、ほら? これとか
「……昨日も言ったわよ?」
「す、すいません……。あ、なら──す、少しだけ待っててください!」
そう言うと、ジゼルは受付の奥へと引っ込んだ。
待っている間に、近くの大柱に
『
『東部地区において多数の
『
『【盟約の
……世の中、
クラン、というのは、一定数以上の冒険者達が寄り集まって作られる団体だ。
【盟約の桜花】は大陸西方に勇名を
私も何時か、そんな冒険者に──。
「お待たせしましたっ!」
そんなことを受付の台に
片手に持っていた小箱と
小箱には
「……これは?」
私は何だか
「……ここから先は内密にお願いしますね? 実はですね、これ、本当はエルミア
私はギルド職員でありながら制服をメイド服風に改造し、担当すら持っていない、存在自体が
確かにこの数週間、姿を見かけていない。
……いれば、色々と相談──……ち、
あ、あんな子に、べ、別に相談することなんてないしっ!
…………でも、いてくれたら
私は内心の
「……あの
ジゼルが
「あ、あれで、お仕事は出来る方なんですよ? 顔も広くて、帝都や、西都、迷都だけでなく、帝国外のギルドの
「……
私はジゼルへ再度問いかけた。
すると、こちらはきちんと制服を着ている担当窓口が胸を張った。
「冒険者になりたての
「…………帰るわ」
すると、少女は受付
げんなりしながらも顔をジゼルに向けると、思ったよりも
「レベッカさん……もしかして、これを単なるおつかい、
珍しく
「……違うわけ?」
「違いますっ! これはあの先輩が……
……
私はこの少女と出会って以来、一番
「……分かったわ。今度、たっぷりと
「! え? レ、レベッカさんが依頼の件以外で私とお話をしてくださるんですか!?
「…………」
私は思わず視線を逸らす。
思ったよりも気付くのが早い。でも……確かにちょっと気になる。
エルミアは、基本仕事をしないことで名を馳せている。
それでいて、ギルド内では謎の権力を持っていて誰も逆らえず、冒険者でもないのに、やたらと強い。
一度、迷都からやって来て事情を知らない第四階位がジゼルに
──そんな、辺境都市の冒険者ならば誰しもが知っている、あの胸無しチビハーフエルフが渡さない仕事?
年上の少女が説明を続ける。
「先輩はこの件について、何一つ教えてくれません。聞こうとしただけで、わ、私の昔の失態を西都の両親へ一つずつ手紙で……うぅぅ……。わ、私だって、羽目を外す時があるんですっ!! ま、毎回、毎回、お酒で先輩や、ギルドの人達に
「……
「…………そ、その、ほ、ほんの少し。ギルド内の食事会の最初に、き、気持ちだけ……」
ジト目で見やると少女は
「……何回目なのよ? で、分かってることは?」
「そ、そんなに飲んでないですよっ!? あ、はーい」
話を
「こほん。分かっているのは二つだけ。まず、品物と封筒が先輩
「届くって、
「大陸各地からです」
「……はぁ?」
まじまじと、年上の少女の顔を見つめる。
……
「帝国内だけじゃないんです。北も南も東も西も、何処からだってきます。この前は極東や南方大陸からも届きました」
「……誰が送って来てるわけ?」
「そこまでは。この封筒にも
「あくまでも、予想、なのね」
置かれた封筒と小箱をしげしげと眺める。
そこには、差出人の名前はなく、
『いい加減、席を
と書かれているだけ。
この字と封筒、それにリボン。きっと女性ね。……席?
小首を
「それが届くと先輩は荷物を持ってすぐ出かけられます。つい最近まで行き先は不明でした。が、秘密をどうしても知りたいというか、先輩の弱みを──こほん。先輩ともっと仲良くなりたいなぁ♪ と思った、ギルド内有志がカンパを
……冒険者は変人が多いけど、ギルド職員も似たり寄ったりよね。
額に手を置きつつ、
「何をしてるのよ、あんた達は」
「し、仕方なかったんです。あの人、異常に
「──で、何処まで分かったの?」
そう尋ねると、ジゼルはにやりと笑った。
……悪い
少しだけ、ほんの少しだけ、私の妹に似てる。
年上の少女は私の反応には気づかず、言葉を続けた。
「依頼を受けてくれない限り、これ以上は話せません!」
私は両手を軽く上げる。
「はぁ……分かった。受けるわ」
「ふふ。ありがとうございます。レベッカさんには、この小箱と封筒を街外れにある
「…………それだけ?」
「はい。現状分かっているのは、先輩がそこに行ってるということだけなので……。帰る時、手ぶらですし、品物はその場所に置いてきているか、誰かに渡しているんじゃないかなと思うんです!」
「……これ、危ない話じゃないわよね?」
限りなく
しかも、私がちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、苦手にしている怪談話の気配も
すると、少女は大きく
「むしろ良い話です。確定している情報は話した点だけですが……その廃教会には、以前から
「噂話?」
「はい。えっとですねぇ……」
ジゼルは制服のポケットから手帳を取り出し、
曰く『その男は、自らを【育成者】と
曰く『その男に育成を
第一、すぐ有名になって人が押し寄せるだろうに、そんな話は聞いたこともない。噂ですら初めて聞いたし。
やっぱりこんな話は断って──。
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