第1章 その4
「しまえないのが、私の悪いところ、ね」
今、私の目の前には廃教会がある。
確かに古びてはいるが、思ったよりもボロボロじゃない。
でも、見たところ屋根も
まだ真昼。……お化けの気配はなし。
『エルミア
ジゼルの言葉を思い出しつつ、教会の
割れたステンドグラスから十分な光が入ってきて明るい。
少なくとも見える
木製のベンチが
一番前のそれには毛布? ……はっ!
「まさか、あの
「
「ああ、なるほど。ここで見張りを──……」
ん? 私は今、
ゆっくりと後ろを振り返る。
すると、
「やぁ、こんにちは」
「…………」
青年は軽く左手を上げてきた。
見たところ二十代前半。大陸では
それにしても
警戒する私に対して、
「買い物で外へ出てみたら、こんな可愛らしいお客人と
いきなりの遭遇に
「ギルドからのお
「お遣い?」
「え、ええ。宛名は
布袋から小箱と
青年は私に近づき、困った表情を
「こういう品を持ってくるのは、あの子の仕事にしているんだけど……。まさかこの仕事さえも人に任せるなんてね。今度、お
「? オキュウ???」
「ああ、こっちの話。助かったよ、ありがとう」
青年がにこやかに答える。
……なんか変な
封筒と小箱を見せる。
「はい、これ。後で
「ちょっと待ってね」
男は
「ごめん、手元にペンがないんだ。中でするよ。お茶も飲んでいくといい」
「い、いや私は……」
「いいから、いいから。ここで会ったのも何かの
青年はそう言って表の扉を押すと、廃教会の中にさっさと入って行ってしまった。
なんなのよ、あいつ。……正直、入りたくない。
けど、サインを
先に奥の部屋へ入っていった青年を目で追う。意を決して、私も扉の中へ。
「こっちだよ、早くおいで」
奥から声。どうやら、居住空間は別らしい。
だけど……そんなに奥行きあったかしら? 疑問を感じつつも追いつき、
「ねぇ、どうしてこんな所に住んでいるの?」
「単に
「物置?」
「見てもらった方が早いかな。さ、どうぞ」
そう言って、やけに重厚な黒い扉を開けた。
扉には
でも、魔力は、何も感じないし、見たこともない。
「? どうかしたかい?」
「……何でもないわ」
強がりつつ扉を潜り
「!?」
私は立ち
「ふふふ。その反応、
「な、何なの、よ、こ、これ……」
そこは、まるで博物館のような場所だった。
言葉が出てこず、周囲を見渡す。
そして、天井に届くほど高い
手前の棚に収められているのは、無数の
「慣れないで入り込むと迷子になるよ? 気になるなら今度、案内しよう。今日はこっちだけを通っておくれ」
という青年の言葉を受けて、止まった。
おっかなびっくり青年の後をついていくと、その通路だけでも次々ととんでもない物が目に飛び込んできて、心臓がその都度、動揺してしまう。
明らかに上級と分かる
その横の棚には強い魔力を帯びている無数の本がずらり。あの青い表紙の本。もしかして禁書じゃ?
そうこうしていると、生物由来の素材がまとめられている棚の列が目に入って来た。
……まさか、そ、そんな……
先を進む青年へ問いかける。
「ね、ねぇ……これ、
「ん? ああ、それかぁ。
「…………」
何を言ってるのか理解出来ず
龍、龍と言ったのか、この男は。
冒険者を志したならば、誰もが
青年の顔をまじまじと
彼は少しだけ困った表情を浮かべると、歩を進めながら、言い訳じみた口調で語り出す。
「昔、後押しをした子達が
その
『その男は【育成者】を自称している』
『その男に育成を頼んだ冒険者は今や皆、大陸級である』
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