第3話
「啓介。聞いてる?」
「ん……ああ」
昼休み、クラスメイトの優斗が、スマホを眺める啓介に声をかける。
彰が死んで以来、啓介は優斗と昼食を取るようになっていた。
「なんか啓介、彰みたいだな」
「は? どこが」
「スマホ依存っぽいところ」
「俺が?」
「まあ彰の方が重症だったか。俺も結構、弄る方だけど」
声をかけられすぐに見るのをやめたが、自分もまた彰と似たようなことをしていたのだと気付く。
啓介は、かつてのことを水に流すよう、新たにメッセージアプリでのID取得を済ませていた。
彰の死は自分のせいではない。
何度も何度もそう自分に言い聞かせ、いまに至る。
「そういえば昨日、知らないやつからメッセージが着てさぁ」
優斗はそう話を切り出し自分のスマホを取り出す。
「結構あんじゃねぇの、そういう迷惑メールみたいなやつ」
「まあそうなんだけど。こいつ」
優斗から差し出された画面に目を向ける。
『rinko』
啓介は思わず顔を引きつらせた。
かつて自分が消したはずのID。
「……で、結局、優斗の知らないやつなんだろ」
「そうなんだけど、アイコンが俺なんだよね」
まさか。
そんなことあるはずがない。
血の気が引く……という感覚を久し振りに味わう。
「じゃあ、知ってるやつじゃねぇの?」
「知ってるやつでも、俺のアイコンとかおかしくね?」
「確かにな」
啓介は、早くこの会話が終わらないかと、なるべく自然な態度を試みる。
優斗に疑われないように。
「無視しとけば、そのうちおさまるだろ」
「それもそうか」
ひとまず納得した様子で、優斗はスマホをポケットにしまった。
はたして、偶然だろうか。
いや、そんな偶然はありえない。
だったら誰が優斗にメッセージを送っているというのだろう。
気味が悪い。
その感情を押し殺し、啓介は食べかけのご飯を詰め込んだ。
その日の夜。
啓介がベッドへと寝転がったそのとき、メッセージの着信音が響く。
大して気にも留めず、啓介は手を伸ばしスマホを確認する。
『こんにちは』
なんでもないメッセージ文だというのに、眠気が吹っ飛んだ。
メッセージ画面に表示されたアイコンは、小さくて誰が映っているかわからない。
わからないけど、自分かもしれない。
『今、なにしてる?』
『暇?』
立て続けに入るメールは、以前、啓介が送った文面と同じだった。
ただの間違いだとか、流行りのチェーンメールだとか、そんな風には思えず、啓介はバクバクと脈打つ鼓動をなんとか落ち着けようと深呼吸を繰り返す。
返信など出来る精神状態では無い。
それでも、念のため確認しようと、ホーム画面へと飛んでみる。
そこには啓介が予測した通り、自分の画像が載せられていた。
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