第5話危なかった

7月20日満里奈は11時45分に新倉敷グランドホテルに着いた。雨宮健司はまだ来ていなかった。健司は12時15分に来た。

「遅くなってすみません」

「時間にルーズな人は嫌いです」

「そんなに怒らなくてもいいじゃないですか」

「次からは、ちゃんと時間通りに来て下さいね」

「次からはそうします」

「ところで雨宮さんは奈良でお勤めですか」

「いいえ、普段は大阪の事務所で働いています」

「公認会計士ってどんなお仕事ですか」

「中小企業の決算書が正しく作られているか調べる仕事です」

「とても難しいお仕事ですね」

「まあ、覚えてしまえば、決算書がルール通りに作られているか調べるだけですから」

「西田さんのお仕事はどんなのですか」

「私は、お客様のご用向きにお応えする仕事です」

「難しい仕事ですね」

「そうですね臨機応変にやらなければならないのが難しいところですね」

「では、そろそろこれで」

「今日は遠いところありがとうございました」

 雨宮を正面玄関まで送ったところ。

 満里奈がおじさんから声をかけられた。

「私は麻薬取締官です」身分証明書を見せられた。

「あの男とは、どんなご関係ですか」

「今日初めて会ったのです」

「どういうご関係で」

「結婚相談所の紹介で知り合いました」

「なるほど、あの男は何と名乗りました」

「雨宮健司さんです」

「あの男は綾瀬明男と言って覚せい剤販売の元締めなんですよ」

「えーっ」


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