第16話 婚約者と大魔法

「じゃあ行きます!竜巻ストーム!」


サクラが放った竜巻ストームは、嵐属性の中でも簡単な方のスキルだが、代わりにとても綺麗な魔力の流れで構成されていた。


「凄い綺麗な魔力の流れの魔法だね。かなりの練度が伺える。それで、体内魔力の動きは掴めたかな?」


「はい、少しですが体の中を温かいものが流れているのを感じました。ただ、まだ根本が掴めていないので…。」


「大丈夫、大丈夫。1回で魔力の流れが掴めただけ上出来だよ。まだ魔力は余裕があるかな?大丈夫そうなら何度もチャレンジすればいいさ。」


「はい、ありがとうございます!」


そう言ってサクラは花の蕾が綻ぶように破顔するのだった。


♢♢♢


「サクラ、そろそろ魔力きついんじゃない?時間も時間だし、切り上げようか。どうだった?魔力は感じ取れたかな。」


「はい、胸の中心辺りに温かい塊のような物があるのを感じました。ここから一部を動かせるように練習するんですか?」


「そうだね、そうやって体内魔力を自由に動かせるようになると便利だし、魔力操作の練習にもなるからね。」


「わかりました。最後に1回、トラウさんの最大級の魔法を見せて貰えませんか?」


「最大級かぁー。今練習中の魔法があるからそれを見せようか。銃を出してーっ弾丸は水だね。よし。」


「(え?今銃って…。)」


「あ、僕の杖変な形してるか。まぁ、これが僕の杖なんだけど、それは置いといて。じゃあ行くよ?まぁ、基本属性の魔法だから見たことあるかもねぇ。」


そうして魔力を紡ぎ出す。


海神の槍トリアイナ!」


そうして発動した魔法は水属性の大魔法。超高圧で、太いウォーターカッターの形をとる魔法である。その魔法が当たった地面は大きく抉れていた。


「あちゃー。やっぱり抉れたか。無属性で結界は張ってあるんだが。」


「トラウさんはやばいですね…。」


サクラが少し引いてこっちを見てくる。


「いやいや、大魔法は大体こんなもんでしょ!しょうがないんだよー!」


「トラウ、まずお前の歳で大魔法が使えるのがおかしいと、何度も言っている。」


先生が口出ししてきた。


「トラウ達が真面目に練習をしていたから、口出しはしなかったが、そうポンポンと大魔法を撃つな!私の胃に穴が空く!」


「大丈夫ですよ先生。そう簡単に操作は失敗しませんよ。全力で集中してるんですし。それに発動と同時に3重の結界張ってあるんですからそんなに大きな被害は出ませんって。」


「無詠唱、同時展開ですか!?レベルが段違いですね…。」


「あぁ、言ってなかったか。基本属性は比較的簡単に同時に発動できるんだよ。無詠唱もそうだね。基本属性の魔法は、魔力の流れが簡単かつ、そんなに大きくないから同時展開とか、無詠唱も簡単なんだ。体外魔力の操作がある程度上手くなったらすぐできるよ。ただ、大魔法級はまだ無理だけどね。」


大魔法とは、その属性の最上位クラスの魔法で、大体の場合莫大な魔力を要する。しかも、それを制御するだけの魔力操作能力が必要だ。まだ練習中で、慣れてない分最適な魔力操作が出来ないので大魔法を2つ以上同時に発動はできない。もう少し練習したらできるだろうか。


「ほへぇー。基本属性ならできるんですか?」


「トラウの話は信用しない方がいい。あいつの常識は狂ってる。この前は大魔法の練習をちょっとしたいって言って5時間ぶっ通しで練習していたぐらいだ。」


「5時間ですか…凄い集中力ですね。」


「まぁ、魔法の練習はたのしいからね。魔力さえつづけば無限に続けられる自信がある。」


「トラウ、流石にそれは褒められん。」


「ははっ、褒めて欲しくて言ってるわけじゃないので大丈夫ですよ。」


そうやってしばらく雑談をしていると、サクラが


「そういえば、トラウさんが発動できる大魔法は海神の槍トリアイナひとつなんですか?」


と聞いてきた。


「いや?氷と無、音も使えるよ。ただ、海神の槍トリアイナよりも範囲が広くてね。あそこだと少し狭いかもしれなかったから。」


「どんな魔法なんですか?」


完全な好奇心から聞いているんだろう、目がキラッキラしている。


「そんなに魔法好きなの?」


「えぇ、とても。(魔法なんてかっこいいの、見逃せるか!)」


「そうかぁ、僕たち気が合いそうだ!」


「そうですね!で、他の大魔法ってどんなのなんですか?」


「あぁ、そうだったね。氷属性の大魔法は、氷結地獄コキュートスって言って、自分の周り丸ごと凍り付かせる魔法。無属性なら、結界爆破バリアバーストっていう、無属性の結界を圧縮して大爆発させて周囲を破壊する魔法。音属性なら、音響破壊アコースティックブレイクっていう、超高周波の音波で周りを崩壊させる魔法だね。範囲攻撃なうえに、範囲の指定が難しいからここじゃ使いにくいんだ。」


「やばい人じゃないですか。人間兵器じゃないですか。」


「おう、今更気づいたか。しかも、これが限界じゃなさそうなのがやばい。私はこれでもこの王国の騎士団に所属していた、国内トップレベルの実力者だと感じていたが、こいつはそれを悠々と超えてきた。しかも剣術も騎士レベルで、本職は生産職だ。バケモンだよ、こいつは。」


「先生それはあんまりですよ。しっかり人間ですよ。ほら、手足はそれぞれ日本で、眼も二個。口と鼻は一個ずつ。角とかもないし、肌も二人と同じ肌色ですっ!」


「それが基準なのも少しおかしい気がするが…。それより、そろそろ戻った方がいいんじゃないか?そろそろ話も終わってるだろうし。」


「はい、わかりました先生。また明日。じゃあ、行こうかサクラ。」


「はい。」

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