第15話 婚約者と魔力操作講座
「あの、聞こえてますよね?」
「ああ、聞こえてますよ。ごめんなさい、考え事をしてました。」
こんにちは、トラウです。婚約者さんのステータスを見て、思考の海に潜っていたところ、引き上げられました。
「それで、その魔力をふにゃふにゃ操ってるのはどうやってるんですか?」
「えっと、ハルミヤさんはこれが見えるってことでOK?」
「サクラでいいです。3年間文通してましたし、しかも私たちは婚約者です。知らない仲ではないでしょう?」
「そうだね、じゃあ僕のことはトラウと読んでください、サクラさん。」
「さんもいりません!それで、トラウさんのさっきの質問ですが、答えはYESです。」
サクラもさん付けてるじゃん…。まぁ、いいか。
「それなら話は早いんだけど、サクラは魔力は放出できる?」
「はい、その程度ならできるのですが、トラウさんの様に沢山を正確には動かせないです。」
「多分それは魔力操作の練度の問題だと思うから、練習あるのみだね。いつもはどんな練習してるの?」
「とりあえず、魔力を放出して、それを操るようにしていますが…。」
「それよりは、まず体内魔力をしっかり操れるようになった方が良いかも。体外魔力よりも操りやすいし、何より操れると便利なんだ。身体強化ができたり、治癒りょくが高まったりするからね。」
何より、先生の魔闘技なんてその強化術の代表格だろう。
「そうなんですか!じゃあ、体内魔力を操るにはどうすればいいのですか?」
「自分の胸のあたりに温かい塊みたいなものがあるのが分かるかな?多分魔力感知を持ってたら分かるはずなんだけど。」
「すいません、よくわからないです……。」
たぶん普段から魔力は感知するわけじゃ無く、”視て”きたから視えないものを感知することに慣れてないのだろう。
「じゃあ、魔法を使うときに自分の体の中に、何か流れている感覚はあるかい?その時に流れているのが魔力だね。」
「それはなんとなく分かります。でもここじゃ魔法使えないし…。」
まぁ、そりゃ他の家の応接室で魔法ぶっ放すわけにはいかないもんな。
「じゃあ、訓練場にでも行くか。父上、サクラと訓練場に言ってきてもよろしいでしょうか。」
「おお、相手の子とは仲良くなれたのかい?じゃあ、行ってきてもいいぞ。」
「サクラ、くれぐれも失礼のないようにな。」
「はい、お父様。行ってきます。」
両方の親から許可をもらったので、さっそく訓練場に向かうことにする。
「それにしても広いお屋敷ですねー。私の家も大きいと思っていたのですが。」
「まぁ、仮にも侯爵、普通になれる爵位の中で最高位だからね。でも、サクラの家のお屋敷は子爵にしてはでかい方でしょ?やっぱり勇者の家系なんだし。」
「ええ、他の子爵のお友達と比べると大きいですが…。」
「まぁ、僕は屋敷は大きくなくてもいいと思うんだけどねぇ。移動がめんどくさい。あ、あと少しで着くよ。」
そんな話をしながらしばらく歩くと訓練場が見えてきた。
「かなりしっかりした訓練場ですね。やっぱりトラウさんはいつもここで練習なさっているんですか?」
「そうだね、ここで魔法とか、剣術とかの練習を家庭教師の人と一緒にやってるかな。あ、ちょうど良い所に。先生ー。」
そんな話をしているところで、先生が近くを通ったので声を掛けてみる。
「どうしたトラウ、今日は婚約者とその親と顔合わせだろう?」
「紹介します、こっちにいる女の子がその婚約者のサクラ。サクラ、こっちのクールなイケメンさんが僕の家庭教師のメイス先生。」
「初めまして、サクラ・ツー・ハルミヤです。この度、トラウさんの婚約者になりました。」
「これはご丁寧にどうも、私はトラウに剣術と、一応魔術の指導をしているメイス・フォン・アルマスだ。よろしく頼む。それでトラウ、なんで婚約者を連れてこんなところにいるんだ?」
「実はね、顔合わせの最中に親同士が僕たちに関係なさそうなめんどくさい話をし始めて、暇だったから魔力操作の練習をしてたんだ。勿論魔力は極力隠ぺいしてたよ。そしたらサクラがその魔力を操っているのに気が付いて、話しかけてきたんだ。」
「すごいな、この国で十指に入る魔術師だと思われるトラウの魔力隠ぺいはほとんど気づけないんだが。」
「一応、魔力完全感知を持ってますので…。」
「なんなんだ、お前ら世代は絶対にレアなスキルを持ってないと生きていけないのか…?」
それは僕も思う。マジで魔王とか復活しないよね?
「まぁ、多分僕らだけが、偶々強いんだと思うよ?、、、多分。」
確証はない。ただ、何岡なるんじゃないかな、という気はする。
「それで、さっきの話に戻るけど、魔法を使った時に、体の中を流れてるものの正体が体内魔力なんだ。だから、サクラはその感覚をつかんで自分の中にある魔力を操るところから始めようか。」
「分かりました、やってみますね。魔法はどんなものでも大丈夫なのですか?」
「ある程度は僕が防げるし、ここなら地面に穴開けても問題はないからねー。(一回やっちゃったし。)」
「?今最後は何て言いましたか?」
「何でもないよ、ささっ、始めて初めて。」
そんなこんなで、魔力操作講座がスタートした。
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