第4話 許婚問題とお茶会

 こんにちは、トラウです。現在三歳になりました。いやはや、やることがあると時間が経つのが早い早い。毎日魔力を増やすために魔力を練ったり、放出したり、時には初めて見かけた人を鑑定したりとても濃密な三年間だったと言えよう。両親も、使用人のみんなもとても優しい。しかも、今世は両親がとんでもな美男美女。父上は、鮮やかな蒼い髪に碧の瞳。母上は柔らかなブロンドの髪に淡いピンクの瞳。両方から遺伝した所為か、僕の髪色は薄っすら青味がかった金髪に、碧の瞳。しかも両親が美男美女な為、顔もかなり整っている。どこに不満があるというのか。今ここにあるんだ。

 今僕が持っているのは父上が渡してきた一枚の紙ぺらである。これが私を苦しめているのだ。かかれているのは、許婚を決めたいからお茶会を開いて色んな令嬢に来てもらう、というものだった。しかも、今回決まらなかったら勝手に決める、とまで書かれている。うっそだろおい。貴族だからあるかもしれないとは思っていたが、ここまで早いか。しかもお茶会って。絶対出たくないんだが。

 何々、本当なら五歳になってからするつもりだったが、すでにマナーの先生が褒めちぎっているから大丈夫だと踏んだ?oh…。そうなのだ、一か月ほど前からマナーを教えてくれるカテキョが毎日来て一日二時間みっちりしごかれている。おかげで、紅茶を入れるのがうまくなりましたとさ。まあ、中身は三年前から男子高校生なわけで。ある程度のマナーはわかるし、いざとなれば全知の書庫アカシックレコードを使って自習できる。そんなこんなでかなりのレベルの礼儀作法が身についたわけだ。しかし、そのせいでこんなことになるなんて思いもしなかった。

 そういえばステータスはこんな感じである。


 名前:トラウ・フォン・フラメル 年齢:3 性別:男


 job:大賢者 Lv:3(+2) 加護:創造神


 HP:75(+59)

 MP:2567(+2111)


 STR:40(+33)

 DEF:42(+37)

 INT:783(+269)

 RES:61(+52)

 DEX:136(+93)

 AGI:47(+41)


 スキル:全知の書庫アカシックレコード 鑑定 錬金術 錬成術 付与術 魔力回復速度増加 言語理解 魔力感知 魔力操作 魔力纏(new) 魔力操身(new) 礼儀作法(new) 


 こんな感じだ。正直なところ、ステータスの伸びが大きくて驚いている。レベルアップしたのが大きいのだろう。ただ生活するだけで、十五歳までに大抵Lv:10ぐらいまでは上がるらしい。このレベルというのは、魔物などを倒すと上がるらしいのだが、微生物や、小さな虫のような魔物もいるため、それを知らず知らずのうちに倒しているのが原因だそうだ。全知の書庫様々である。

 新しいスキルについてだが、まず魔力纏。これは、魔力操作の練習の一環で試しに魔力を体に巻き付けたところ発現した。魔力で全身を覆うことで動きをサポートし、身体能力を底上げできるらしい。便利なスキルだった。

 次に魔力操身。これは、魔力纏で、無理やり体を動かせないか試した結果できたスキルだ。こいつはとんでもないじゃじゃ馬だ。自分の身体能力以上の力で体を操れるが、無理し続けると全身筋肉痛でひどいことになる。もちろん実体験だ。そんなことになった日はみんなにひどく心配された。両親は医者を大量に呼びつけ、使用人たちは、一挙手一投足心配してくるといった具合に。みんな優しいのはいいのだが、さすがに恥ずかしかった。

 最後に礼儀作法。これはさっき言ったように一か月ほど前からマナーを教えてくれるカテキョが来て、マナーを教えてくれるので身についたスキル…ではなく、魔力操身を全知の書庫に関連付けて正しい礼儀作法の通りに体を操っていたら身についたスキルである。

 関連付けと全知の書庫の相性が良すぎる気がするが、とっても便利で楽できるので助かる。

 ここで、ビックニュースである。このステータスと呼ばれるもの、実は普通は5歳まで出ないらしい。5歳になって教会で祝福を受けることで初めて見れるようになるのだとか。しかも、ステータスが出てからじゃないとレベルは上がらないらしい。トラウちゃんお口あんぐりである。つまり、5歳からレベルが上がって15歳でLv:10、一年に一ずつ上がると考えるのが自然だろう。これはかなりのアドバンテージになる。レベルにして5ほど先行できる可能性があると言うことだ。ちなみに、ステータスがすでに出ている理由は、僕が既に神から祝福を受けているからだろう。転生特典みたいなものだ。教会の祝福の時はどうなるか分からないが、まあ、なるようになるだろう。

まあ、それはいいとして。お茶会と許婚である。どうしたものか。とりあえず父上に直談判しに行こう。

父上の執務室に着いたら、まず息を整えてノックだ。コンコン。

「父上、トラウです。」

「おぉー、入れ。」

入る許可が出たので部屋に入る。

「失礼します、父上。それにしてもこれはなんですか?如何せん急だと感じるのですが。」

続けて父上に質問だ。さあ、なんて返って来るのか。

「あー、それか。確かに早いかもしれないが早いにこしたことは無いだろう?社交界デビューが早いのは大きなアドバンテージになる。それに許婚が決まってないと侯爵家の嫡男であるお前は詰め寄られまくって大変だぞ?」

実感の篭った言葉に酷く納得させられる。でも僕の感性は一般的な日本人の感性、恋愛結婚に憧れがあるのだ。

「しかし父上、私は恋愛結婚をしたいのです。それにやはりお茶会は私には早いと思います。」

「恋愛結婚かぁ、それなら好きになった人を側室に迎えればいいじゃないか。とりあえず許婚は決めた方がいい。あと、お茶会は確定事項だ。既に各貴族に招待状を送ってある。2ヶ月後になるので礼服を仕立てるぞ。」

はい、逃げ口が閉ざされました。しかもお茶会キャンセル不可能です。なんてこった。致し方なし。お茶会は仕方なかろう。でも許婚は絶対に阻止してみせる!

「分かりました、父上。しかし許婚はまだ結構です。結婚相手は自分で見つけます。」

「分かった。ただ、10歳までには見つけておけ。それでも見つからなかったら私が決める。この後仕立て屋に行くぞ。準備しておけよ。」

よっしゃ!とりあえず許婚の件は回避した。お茶会は諦めるしかないだろう。…2ヶ月先か、今から憂鬱だ。しかも許婚は10歳がタイムリミットか。どうしたものか。

「ありがとうございます、父上。すぐに準備して参ります。」

ああ、憂鬱だぁ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る