第12話 不可抗力なんですよ?
「えっと……」
少し迷ってしまう。
することがないから。
「ううっ……寒い……」
まだ始業式前の一か月前で、3月上旬。
さらに地肌に直接、巫女衣装を身に纏っている事――、そして朝方の日が昇ったばかりという事もあり、少し風が吹くだけで身体の芯が凍えそう。
「そういえば、以前に巫女服を着た時は、ホッカイロが用意されていたっけ……」
あとは下にジャージも着ていたから、年末でもそれなりに大丈夫だったけど、いまの状態で年末年始を超すなら風邪を引くことは避けられそうもない。
「いけない、いけない」
ぶんぶんと音が鳴りそうなくらいの勢いで頭を左右に振る。
その際に、腰まで伸ばしてあるというかお金が無くて美容院にいかないので伸びてしまった髪が左右に振られる。
一応、髪ゴムで止めてあるけど、これから仕事をするのなら邪魔にならないように纏めた方がいいかも知れない。
「――と、とりあえず! ま、まずは仕事をして身体を温めないと!」
身体を動かしていれば寒さは何とか凌げると思うから。
そうなると――。
母屋の裏手の方へと回る。
「あった!」
そこは、母屋のリフォームからは漏れていたのか、もはや何時でも倒壊しそうな木製の物置小屋があった。
建て付けも、5年近く放置されていた事もあり、戸口を横にスライドさせようとしただけで、音を立てて物置小屋が崩壊。
「……こ、これって……、怒られたりする? 待つのよ、莉緒。ここは職場で、備品が壊れたのは、雇い主が悪いって事に……ならないよね?」
絶対、あの不愛想な高槻さんから罵倒が飛んでくるのは火を見るよりも明らかで、それを思うと思わず溜息が出てしまう。
「――と、とりあえず時間をおいて報告をすると怒られそうだし……境内は綺麗だから物置小屋が崩壊したことを報告しにいこ」
「おい! 莉緒!」
そう決心したところで、後ろから威圧感のある声が!
ギギギギッと、壊れたロボットのように振り向くと、そこには、先ほどまでしていた眼鏡を外した高槻さんの姿が!
目を吊り上がらせて怒っているのが分かる。
相変わらず目つきが悪い。
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